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2月26日由良町で現地学習会が開催されました。

 2月26日(日)13時30分から由良町中央公民館で、現地学習会「歴史から学ぶ防災2016-命と文化遺産とを守る-」が開催され、94人の参加がありました。

IMG_4617(研修会)

 司会は、和歌山大学紀州経済史文化史研究所特任准教授の吉村旭輝さんにお願いしました。

IMG_4613(司会吉村さん)

 まず、主催者を代表して、当館の苗代副館長が開会の挨拶を行いました。

IMG_4615(苗代副館長)

 続いて、5人の方々に報告をおこなっていただきました。
 由良町文化財保護審議会委員長大野治さんの「由良町の地震・津波の記録と遺跡」の報告では、まず記録に残る由良町を襲った地震・津波についてお話しいただきました。そのうえで、安政地震津波については記録に記された痕跡を示す遺跡・供養墓などを紹介していただき、昭和南海地震津波については、聞き取り調査に基づく浸水被害の状況を具体的にお話しいただきました。

IMG_4622(大野さん)

 由良町文化財保護審議会委員小出潔さんの「津波と船」の報告では、安政地震津波を中心に、当時日本近海に出現した外国船の問題とも絡ませてお話しいただきました。さらに、現在の印南町出身で医者の羽山大学が記した詳細な津波被害状況などを記した記録も紹介していただきました。。

IMG_4624(小出さん)

 神戸大学大学院人文学研究科特命講師木村修二さんの「由良町の安政地震津波記録の諸本」の報告では、まず日本で起こった過去の地震津波の記録がどのような形で活字化されているかを紹介していただきました。そのうえで、由良町域に残る安政地震津波の記録が紹介され、われわれはそうした記録を残していくとともに、その内容を理解するために、現代語訳などをおこなっていく必要があるとお話しいただきました。

IMG_4638(木村さん)

 和歌山県教育庁文化遺産課副主査三本周作さんの「浄土真宗寺院の文化遺産-由良町内の寺院を例に-」の報告では、由良町域の海岸部を中心に浄土真宗が広まっていった背景をお話しいただきました。そのうえで、日々お寺で礼拝の対象となっているご尊像がどのような背景で祭られるようになったかをお話しいただき、ご尊像が具体的に制作された事情を大引の浄明寺を例にお話しいただきました。

IMG_4651(三本さん)

 歴史資料保全ネット・わかやま会員浜田拓志さんの「文化遺産を未来に伝える-由良町における町誌資料と民俗資料等の実践-」の報告では、過疎化や郷土意識の希薄などが要因となって、地域に残る文化遺産が散逸・消失していく危機があるなかで、由良町誌編さんが一つのきっかけになり、編さん事業が完了したのちも大野治氏や由良町教育委員会が中心となって、地域の文化遺産を整理し、空き教室に保管して行こうとする取り組みが行われていることを紹介されました。
                    
IMG_4655(浜田さん)

 最後に、ご後援をしていただきました由良町教育委員会の寒川正美教育長様から、閉会の挨拶を兼ねて、今回の学習会の感想をお話しいただきました。

IMG_4668(寒川教育長)

 閉会後、希望者を募って行われたワークショップには9人の方にお集まりいただきました。姫路大学人文学・人権教育研究所准教授松下正和さんの司会のもと、まず今回の学習会の感想をお聞きしました。そのあと、ハザードマップを見ながら、居住地での防災の取り組みなどについて、意見交換をしました。

IMG_4689(ワークショップ)

 由良町、由良町教育委員会のご協力も得て、盛況のうち終わることができました。心からお礼申しあげます。
(主任学芸員 前田正明)

災害記念碑一覧
和歌山県立博物館ウェブサイト

2月25日印南町で現地学習会が開催されました。

 2月25日(土)13時30分から印南町公民館で、現地学習会「歴史から学ぶ防災2016-命と文化遺産とを守る-」が開催され、75人の参加がありました。

IMG_4342(研修会)

 会場入り口では、印南町立印南中学校阪本尚生さんが指導した津波研究班の研究成果をポスター展示していただきました。

R0014057(ポスター展示) R0014061(ポスター展示)

 司会は、和歌山大学紀州経済史文化史研究所特任准教授の吉村さんにお願いしました。

IMG_4363(司会吉村さん)

 まず、主催者を代表して、当館の苗代副館長が開会の挨拶を行いました。

IMG_4336(苗代副館長)

 次に、来賓として、印南町長の日裏勝己様からご祝辞をいただきました。

IMG_4352(日裏町長)

 続いて、6人の方々に報告をおこなっていただきました。
 トップバッターは、印南町立印南中学校津波研究班の現役3年生の辻浦才暉さんと卒業生の和歌山県立日高高等学校2年生濵本尚実さんです。2人による「昭和南海地震の聞き取り調査から」の報告では、まず前半で濵本さんから、これまで津波研究班の活動や印南の災害の歴史などをお話ししていただき、後半は辻浦さんから昨年度と今年度に津波研究班が取り組んだ昭和南海地震体験者11人からの聞き取り調査の方法や内容、調査結果の分析によって明らかになったことをお話しいただきました。

IMG_4378(濵本さんと辻浦さん)

 印南町文化協会会長(語り部)の坂下緋美さんの「紀州印南浦今昔 そして,宝永大地震と角屋甚太郎」の報告では、まず印南というのは和歌山県のなかでどのような位置にあるのかをお話ししていただきました。そのうえで、江戸時代の初めには漁業の先進地であった印南が1707年の宝永地震で壊滅的な被害を受けたが、その後も印南浦の漁民が活躍している様子をお話しいただきました。最後に、昭和南海地震での自らの被災経験をお話しいただき、その後の印南浦の様子を写真や絵で紹介いただきました。

IMG_4398(坂下さん)

 和歌山県立博物館主任学芸員前田正明の「宝永地震津波の記憶を伝える」の報告では、有史以来の最大級といわれる宝永地震津波を取りあげ、印南浦に残る資料から、宝永地震津波の記憶がどのように残され、それがどのように伝えられたのか。さらに147年後に起こる安政地震津波が起こった際に、その記憶が生かされていたのかをお話ししました。

IMG_4415(前田)

 歴史資料保全ネット・わかやま会員砂川佳子さんの「印南浦を襲った幕末の災害」の報告では、印南町印南に残された、安政地震津波の記憶を伝える「かめや板壁書置」の記されている内容などについて、詳しく説明いただきました。そのうえで、この震災遺構(遺産)ともいえる板壁が、その後印南町の人たちによって大切に残されてきたことを紹介していただきました。

IMG_4425(砂川さん)

 姫路大学人文学・人権教育研究所准教授松下正和さんの「災害資料を活かした自主防災活動について」の報告では、「災害の記憶」を伝える津波記念碑の全国調査で明らかになった大津浪記念碑(岩手県宮古市)、大地震両川口津浪記石碑(大阪市)、外所地震供養碑(宮崎市)などを紹介していただき、さらに県内に残されている災害資料が防災活動に生かされている事例なども紹介していただきました。

IMG_4435(松下さん)

 最後に、ご後援をしていただきました印南町教育委員会の岡本徹士教育長様から、閉会の挨拶を兼ねて、今回の学習会の感想をお話しいただきました。

IMG_4440(岡本教育長)

 閉会後、希望者を募って行われたワークショップには24人の方にお集まりいただきました。松下正和さんの司会のもと、まず今回の学習会の感想をお聞きしました。そのあと、ハザードマップを見ながら居住地での防災の取り組みなどについて、意見交換をしました。

IMG_4501(ワークショップ)
                  
 印南町、印南町教育委員会のご協力も得て、盛況のうち終わることができました。心からお礼申しあげます。
(主任学芸員 前田正明)

災害記念碑一覧
和歌山県立博物館ウェブサイト

コラム「日光社と湯川川流域の仏教文化」

コラム「日光社と湯川川流域の仏教文化」
 有田川町最奥の地、有田川町上湯川の日光山(標高1110m)の山中に、江戸時代まで日光社という神社がありました。最も盛えたころには多数の建物があったようですが、明治時代に廃絶し、現在は小さな祠が再建されています。祭られた神様の名前をはじめ不明なことが多い謎の神社ですが、そのかつての景観を示す貴重な資料として日光社参詣曼荼羅(和歌山県指定文化財)が残されています(個人蔵)。
 縦148.7㎝、横117.8㎝の大画面の中央に、瑞垣に囲まれた社殿三棟と二つの堂舎が並び、その外に多宝塔が建っています。上方には三つの山(中央が日光山、右が護摩壇山、左が高野山か)がそびえ、下方には湯川川とその流域の集落や寺社が描かれています。本図については従来、瑞籬内にある複数の建物の正面間口を合計すると12になることを根拠として、熊野十二所権現を祀るという説がありましたが、瑞籬内の左側の建物は本来右下に描かれていたものが切断され現位置に貼られており、作画上のデフォルメを受けており、実際には拝殿や本地堂など社殿以外の建物である可能性が高く、日光社と熊野信仰との関係は切り離して検討すべき段階となっています。一方、その信仰圏として描きこまれている湯川川流域の位置づけの重要性は、より高まっているといえます。
 湯川川流域の上湯川地区と下湯川地区は、古くから日光社の信仰に深く関わっていたと考えられますが、県立博物館がこの二つの地区の文化財調査を行ったところ、上湯川地区の薬王寺、下湯川地区の牛蓮寺、下湯川観音堂に、平安時代の仏像や戦国時代の版木など、重要な資料が残されていることが分かりました。日光社の成立も、平安時代に遡ると考えて良いでしょう。
 そうした新発見資料の一つに注目してみましょう。下湯川観音堂の僧形坐像(室町時代)は、蓮の花の上に合掌した僧が坐る珍しいもので、これは菩薩の集団が練り歩く来迎会で用いられる往生者像に類例があります。「続風土記御調に付書上帳」によれば下湯川観音堂には江戸時代後期の段階で「仏面」「如来面」があり「往古仏之舞経営候節所用之面」と伝えています。現在仮面は一つも残されていませんが、菩薩面の髻と推定される朽損甚大な部品が一点残っており、確かに同堂に行道面が伝えられていたことを証明しています。
 有田川流域では下流域の有田市得生寺で来迎会式が現在も行われていますが、上流域の花園荘でも来迎会が行われていたことが上花園神社の仮面群の存在により分かっています。下湯川観音堂に伝えられた往生者像・髻部品から、湯川川流域においてもかつて来迎会が行われていたことが、新たに判明したのです。しかも、この往生者像は現存最古の作例の可能性があります。
 中世世界を彷彿とさせる文化財や景観を濃厚に伝えている湯川川流域については、このように当地を日光社信仰圏として捉えなおし、さらなる調査とともに、その重要性を広く共有していく必要があると考えています。(主査学芸員 大河内智之)

日光社参詣曼荼羅2017
日光社参詣曼荼羅 個人蔵 和歌山県指定文化財
図3 日光社参詣曼荼羅料紙貼継
日光社参詣曼荼羅の料紙貼り継ぎの状況
往生者像
僧形坐像 下湯川観音堂蔵
下湯川観音堂髻部品
髻部品 下湯川観音堂蔵

和歌山県立博物館企画展「有田川中流域の仏教文化―重要文化財・安楽寺多宝小塔修理完成記念―」(1月21日~3月5日)

花坂観音堂に「お身代わり」仏像(3Dプリンター製)を奉納しました(平成29年2月7日)

 和歌山県立博物館では、和歌山県立和歌山工業高等学校の協力を得て、3Dプリンターを用いた文化財の精巧な複製を制作し、文化財の防犯対策を行っています。これは高齢化や人口減少などの要因により、管理や保全が困難になっている地域の寺社等にある文化財を博物館等で保管し、かつ、信仰されてきた環境も従来通り維持するための取り組みで、平成24年度から28年度までの5年間に、県内9か所の寺社に20体の複製を安置してきました。
 このたび、10か所目(21体目)となる、高野町花坂の花坂観音堂に阿弥陀如来坐像を奉納いたしました。この仏像は昨年11月より製作していたもので、仏像の計測、データ修正、出力を県立和歌山工業高等学校産業デザイン科の生徒8名が担当し、着色作業を和歌山大学教育学部美術教室の学生3名が行いました。
花坂観音堂阿弥陀如来坐像(左実物・右レプリカ)
(左:実物 右:複製)
 花坂観音堂の阿弥陀如来坐像は、現在、江戸時代の修理による彩色に覆われていますが、奥行きが深く背筋が伸びた緊張感ある体型や、体部と両脚部材の接合面を湾曲させる技法など、平安時代中ごろ、10~11世紀に造られたものと考えられます。花坂地域にのこる最古の資料ですが、傷みも大きく、また同堂では平成23年に別の仏像が盗難被害に遭っており(→「盗難被害を受けた花坂観音堂の仏像」)、精巧な複製を制作し、「お身代わり」として安置することとなりました。
 2月7日(火)11時、高野山の中腹に位置する花坂地区に高校生6名と大学生1名が到着。地区の集会所には、区長・副区長をはじめ地区の住民の方々、そして高野町立花坂小学校の全校児童(5名)、高野町教育委員会の教育長ほか職員の皆さんに集まっていただき、今回の奉納の趣旨説明、複製の制作方法を説明したのち、生徒代表から上田前区長(現副区長)に「お身代わり」の仏像が手渡されました。
花坂自治会館贈呈式
 その場を借りて博物館から工業高校生徒への感謝状贈呈を行い、地区住民の皆さんに仏像を間近でご覧いただいたのち、花坂観音堂まで全員で移動して仏像を安置しました。真っ先に、花坂小学校の生徒さんにそばで見てもらい、お線香があげられました。
花坂観音堂奉納
 奉納を終えて、博物館副館長よりご挨拶した後、花坂地区の名物の焼きもちをいただきながら、生徒と住民の方々に交流してもらい、帰途につきました。
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 実際に「お身代わり」仏像を作製した生徒・学生と地域住民の方々が交流することで、地域においては複製仏像を受け入れやすくなり、高校生・大学生においては社会とのより深いつながりを感じ、教育効果を高めることにつながるものと考えています。今後も、和歌山県立博物館がハブとしての役割を果たしながら、県立和歌山工業高校、和歌山大学、地域の方々と連携しながら、大切な文化財を継承するための取り組みを続けて参りたいと思います。(主査学芸員 大河内智之)

スポット展示「鹿児島県・日光神社の若い女面」(会期:2月4日~3月5日)

スポット展示「鹿児島県・日光神社の若い女面」
平成29年(2017)2月4日(土)~3月5日(日)

 和歌山県立博物館でただいま開催している企画展「有田川中流域の仏教文化―重要文化財・安楽寺多宝小塔修理完成記念―」(会期:1月21日~3月5日)では、有田川町上湯川の日光山の山中にあって、明治時代に廃絶して今は小祠のみが残る、日光社について紹介しています。
 和歌山県立博物館の収蔵品の中に、面裏に「享禄三年/十一月日/日光神常住/蛭牟田神祇史/光䂓/宇スニク」と記された、「日光神」に奉納された若い女面があります。これは、詩人・教育者・民俗芸能研究者であり、民間仮面の収集に努めた乾武俊氏から、平成27年度に寄贈を受けた227面の仮面のうちの一つです。
 最新の研究では、この銘記にみられる「日光神」については、蛭牟田(ひるむた)氏が神官を務めた鹿児島県曽於市にある日光神社のことを指すことが明らかになっていますが(大河内智之「乾武俊氏の収集仮面について―中世在銘資料の紹介とともに―」(『和歌山県立博物館研究紀要』20、2014年)、それ以前は、和歌山県の日光社の中世の景観を描いた日光社参詣曼荼羅に、神事を行う巫女が象徴的に描かれていることなどから、同社の伝来資料の可能性が検討されてきた経緯があります(乾武俊『能面以前―その基層への往還―』〔私家版、2012年〕、和歌山県立博物館編『高野山麓 祈りのかたち』〔2012年〕)。
 この仮面を寄贈された乾武俊氏は、平成29年1月16日にご逝去されました(享年95歳)。和歌山県の日光社についての展示を行うこの機会に、乾氏追悼の思いを込め、鹿児島県の日光神社よりはるばる伝来した仮面をご紹介します。

 会場:和歌山県立博物館2階学習室スポット展示コーナー
 開館時間:午前9時30分~午後5時
 入館料:無料(ただし、常設展示室・企画展示室へ入室される場合は入館料が必要)
 出陳資料:若い女面(享禄3年〔1530〕) 1面 和歌山県立博物館蔵

曽於市日光神社伝来若い女面 日光神社伝来若い女面面裏
左/若い女面 享禄3年(1530) 和歌山県立博物館蔵
右/若い女面の面裏墨書
 面裏に「享禄三年/十一月日/日光神常住/蛭牟田神祇史/光䂓/宇スニク」と記された若い女面で、蛭牟田(ひるむた)氏が神官を務めた鹿児島県曽於市の日光神社伝来資料。彩色は大きく剝落するが、様式が固定化する以前の中世女面らしい、茫(ぼう)とした、放心したような表情に優れる。神事で使用された可能性がある。 
  
曽於市日光神社
鹿児島県曽於市 日光神社

日光社参詣曼荼羅の巫女
参考:日光社参詣曼荼羅に描かれた巫女





コラム「安楽寺多宝小塔と胎蔵界大日如来坐像-高野山の宗教シンボル-」

コラム「安楽寺多宝小塔と胎蔵界大日如来坐像―高野山の宗教シンボル―」

 有田川町二川の安楽寺に伝来する安楽寺多宝小塔は、総高209.5㎝を計る、南北朝時代(14世紀)に建立された優美な姿を見せる小さな建造物で、重要文化財に指定されています。この塔が納められている収蔵庫の改修にあわせて平成27年度より修理が施され、このたび無事竣工を迎えました。
 修理前の安楽寺多宝小塔の初層部は、正面中央に扉構えがあるのみのシンプルな姿でしたが、修理に伴う調査によって当初は四面に扉構えと連子窓が配されていることが分かり、復元されて建立当初の姿が甦りました。大きな多宝塔をそのまま縮小して細部まで再現している点に大きな特徴があり、初層内部も格天井として、中央には胎蔵界の大日如来坐像が安置されています。
 この塔に安置される大日如来坐像についても、修理に伴って初めて調査が行われ、塔よりも古い、平安時代後期、11世紀に遡る作例と判明しています。総高24.8㎝、宝冠をかぶり、腹前で定印を結んで、蓮台上に坐る姿の胎蔵界大日如来です。蓮台を含む像の全てを檜の一木から彫り出したもので、本来は他の大きな仏像の光背頂部に取り付けられていた仏体であったと考えられ、安楽寺多宝小塔が建立された際に、その本尊として転用されたものです。
 大日如来には、金剛界と胎蔵界の二種類の姿があり、多宝塔本尊としては、その多くで金剛界大日如来像(胸の前で智拳印を結ぶ姿)が選ばれます。ただし高野山上壇上伽藍の大塔の場合は、空海の教義に基づき、胎蔵界の大日如来が選択されています。安楽寺多宝小塔も、この高野山のシンボルとしての大塔を移植するという思想的背景があったのではないかと考えられます。
 有田川町の東半分、旧清水町域の大半を占める阿弖川荘は、長く京都の寂楽寺の荘園でしたが、鎌倉時代末期に高野山領となります。まさに多宝小塔が建立されたのは、その荘園経営が軌道に乗るころのことです。高野山は自らの宗教権力を象徴するシンボルとして、この優美な姿の塔を当地の人々に示したのでしょう。(主査学芸員 大河内智之)

安楽寺多宝小塔 安楽寺蔵 重要文化財安楽寺多宝小塔(修理前)
左/安楽寺多宝小塔(修理後)          右/安楽寺多宝小塔〔修理前)
大日如来坐像(多宝小塔内安置)
胎蔵界大日如来坐像(塔本尊)

企画展「有田川中流域の仏教文化―重要文化財・安楽寺多宝小塔修理完成記念―」について

企画展 有田川中流域の仏教文化
―重要文化財・安楽寺多宝小塔修理完成記念―
平成29年(2017)1月21日(土)~3月5日(日)

 有田川町二川の安楽寺に伝来する安楽寺多宝小塔は、南北朝時代に建立された高さ2m9㎝の小さな塔です。外観、構造ともに屋外の多宝塔を正確に縮小して造られたもので、多宝小塔として日本で唯一、建造物として国の重要文化財に指定されています。平成27年度より修理が行われ、このたび建立当初の姿がよみがえりました。これを記念して、安楽寺多宝小塔を寺外で初めて展示公開します。
 安楽寺多宝小塔が伝わった有田川中流域は、かつて阿弖川荘(あてがわのしょう)とよばれ、京都・寂楽寺(白川寺喜多院)の荘園となった後、鎌倉時代末期以降は高野山の荘園となりました。こうした場に安楽寺多宝小塔が建立された歴史的意義を紐解くとともに、阿弖川荘の各地に伝わる優れた文化財を一堂に展示し、その仏教文化の魅力を紹介します。
※重要文化財1件、和歌山県指定文化財8件、有田川町指定文化財18件を含む、40件約60点の文化財を展示。

入館料 一般 280円(220円) 大学生 170円(140円) ※( )内は20名以上の団体料金。
      ※高校生以下、65歳以上、障害者、県内在学中の外国人留学生は無料。
主催:和歌山県立博物館 協力:(財)和歌山県文化財センター、有田川町教育委員会 後援:有田川町

博物館講座(会場:県立博物館2階学習室)
①「阿弖川荘の仏像と地域史」 2月12日(日) 13:30~15:00  
  講師:大河内智之(主査学芸員)
②「重要文化財安楽寺多宝小塔の保存修理とその成果」 2月18日(土) 13:30~15:00  
  講師:結城啓司氏(公益財団法人和歌山県文化財センター副主査) 
ミュージアムトーク(学芸員による展示解説、各回13:30~14:30)
  日時:1月29日(日)、2月4日(土)、3月4日(土)

有田川中流域の仏教文化チラシ表
有田川中流域の仏教文化チラシ裏

平成28年度職場体験⑧ 和歌山県立和歌山商業高校

職場体験も第8弾です。一応、これで今年の職場体験の受け入れは最後です。
今回は、11月15日(火)から17日(木)までの3日間、
和歌山県立和歌山商業高校の2年生(女子生徒)2名が職場体験に来てくれました。
しかも、そのうちの一人は中学生の時に来てくれていました。。。

初日は、朝礼で自己紹介をしてもらったあと、早速体力仕事をしてもらいました。
かつらぎ町のとあるお堂の仏像を、屋根葺き替えのため一時保管していたのを、
ちょうどお返しするタイミングだったので、
トラックへの積み込み作業を手伝ってもらいました。
その後、例によっての館内見学。
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午後は、古文書の写真撮影。100カットくらい撮影してもらいました。
今年の職場体験での写真撮影、一つの文書群を取り終えることができました。
なんとか予定通り、ホッ。職場体験の生徒さんたちに助けられてます。
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2日目は、まず缶バッジ作成。結構きれいに作るのは難しかったようです。
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そして、午前の途中と午後いっぱい、ミュージアムショップ・受付・監視と
お客様対応をしてもらいました。
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今回は、各1時間ずつと少し長めにやってもらたので、
色々なことを経験してもらえたと思います。

3日目は、まず館蔵資料のラペル添付作業。
収蔵庫の棚から資料を探し、ラベルを付けていきました。
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午前中は少し時間があまったので、掛軸のライティングと撮影もしてもらいました。

午後は、ちょうど大分県へ貸し出していた館蔵資料の返却があったので、
点検(返却)作業の見学をしてもらいました。
資料輸送車の中身、梱包資材と方法、点検作業などなど。
資料の貸し借りという仕事内容についても少し話を聞いてもらい、最後トラックを見送る。
最後に、収蔵庫内の掃除をしました。
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以上で、3日間のメニュー終了。
二人に感想を聞いてみました。

「3日間、お世話になりました。中学校の時も職場体験でお世話になりましたが、またたくさん知らなかったことを知ることができたり、普段なら入れないところに入らせていただいたりして、本当に貴重な体験になりました。国の重要文化財など昔のものを近くで見たり触れることができたりして、良かったです。丁寧に優しくご指導いただき本当にありがとうございました。」

「3日間インターンシップでお世話になりました。私は博物館に来たことがなく、博物館ではどんな事をしているのかを知り、また展示しているだけが博物館なのではなく、他の博物館等に資料を貸したり、借りたりして展示を行ったりするのも博物館の仕事の一部であることを初めて知りました。ミュージアム・ショップに売っている缶バッジやマグネット、鏡など、博物館で働いているかたがたが手作りで作っていることに驚きました。今回、缶バッジ等を実際に作る作業を体験させていただき、作る難しさと楽しさを教えていただきました。この三日間、私にとってすべてが初めての体験で良い経験になりました。ほんとうにこの3日間、大変お世話になりました。」

二人とも3日間お疲れ様でした。
中学生の職場体験は多いのですが、高校生の職場体験はあまりないので、
仕事内容が十分だったか、もっと別のことをした方が良いのかなど(しかも中学生の時に来ているというし)、
こちらも少し戸惑いがありましたが、少しは得るものもあったようでなによりです。
また、博物館へ展示を見に来てくださいね。

  (学芸員 坂本亮太)

平成28年度職場体験⑦ 和歌山市立河北中学校

職場体験第7弾、和歌山市立河北中学校です。
11月9日(水)~11日(金)までの3日間、男子生徒2名が職場体験学習に来てくれました。

初日は例によって朝礼(自己紹介)のあと、館内を見学しました。
これも恒例ですが、中央監視室で電気や温湿度管理、消火設備などの話を聞きました。
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その後、午後はパソコン(エクセルを使って)での入力作業。
昔の手書き調書のデータ化を手伝ってもらいました。
ただし、入力には苦戦のよう。
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2日目は、まず展示室内のガラス拭き。開館前にきれいにしておき、お客様を迎える準備。
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午前は他の博物館・美術館から送られてくるポスター・チラシの整理。
都道府県別に分けて、お客様にご覧いただけるよう会期順にまとめて配架しました。
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その後、博物館収蔵資料の調書作成。スケッチを作成したり、寸法計測をしてもらいました。
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午後は写真撮影。25点(130カット)撮影できました。
古文書の位置決めが難しかったらしいです。
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3日目、午前はひたすら収蔵庫の掃除。
このときに担当の先生も生徒さん達の様子を確認しに来てくれました。
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午後は、受付・ミュージアムショップ・監視などの仕事をしてもらいました。
結構、人も多く色々な仕事をしてもらうことができました。
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以上で、3日間の職場体験は終了しました。
最後に二人に感想を聞いてみました。

「博物館で働いてみて、普段絶対に体験できないような事が色々できた。たとえば、収蔵庫の中に入って作業することで、どんなに気をつけているのかがわかった。収蔵庫が5つに目的ごとに分けられていたり、温度と湿度を常に決められた状態で保っていることなどです。写真撮影では、位置を合わせるのがとても難しかったけど、撮影することで、貴重品を未来にいつまでも残すことができるので、大切なことだと思った。博物館では展示することだけではなく、資料を大切に保管していることや、資料をデータとして記録していること等を学べた。働くことは楽しいことやうれしいこともあるが、大変な事もたくさんあるのだと学んだ。職場体験を通して、僕らの未来の選択のためになったと思う。」

「僕はこの職場に来る前は、博物館はあまり仕事が多くなさそうだと思っていましたが、本当は仕事が多く、さらに博物館の仕事はどの仕事もとても大変でした。特に大変だったのは、収蔵庫の清掃でした。収蔵庫はとても広くて、さらに貴重な文化財もたくさん置いていたので、気を遣いながら清掃をしました。逆に良かった事は、普段入れない収蔵庫に入れたり、その中にある文化財をガラス越しではなく、そのまま見られたことです。僕が今回の職場体験で学んだことは、仕事をしている人の大変さと、その人がいることで仕事が成り立っているという大切さでした。本当に三日間、ありがとうございました。」

二人とも3日間お疲れ様でした。
なかなかしんどい事も多かったようですが、
博物館の仕事や、実際にやってもらったこと意図を十分にくみ取ってもらうことができ、
担当者としてとてもうれしい限りです。
博物館の見方も変わったことと思いますので、
また新しい目で博物館を見に来てくださいね。

    (学芸員 坂本亮太)

平成28年度職場体験⑥ 和歌山市立有功中学校

職場体験第6弾です。毎週のように中学生が職場体験に来てくれてます。
10月26日(水)~29日(金)の3日間、和歌山市立有功中学校の生徒(男子2名)が来てくれました。

今回は職員の都合により、いつもとはスケジュールを若干替えざるをえませんでした。
初日(26日)は、朝礼ののち、まず展示室内のガラス拭き。
毎朝、蘆雪・応挙に出会えるこの幸せ!
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その後、受付など来館者対応をしてもらいました。
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11月19・20日の「関西文化の日」に向けた準備も進めてもらいました。
午後は、館内の表側・裏側の案内。

2日目(27日)、午前は、まず広報物の整理。
全国各地の博物館で開催されている特別展や講演会などのポスター・チラシを、
来館者にも見てもらえるように整理しました。
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その後、収蔵庫の掃除を少しだけ。
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午後は、パソコンでデータ入力。
昔に作られた古文書の手書き目録をエクセルに入力してもらいました。
だいぶ苦戦していました。終わったあとに大きなため息が。。。
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3日目(29日)、午前は古文書の撮影。約130カット撮影してもらいました。
長い古文書もあり、画像がつながるように気をつけて撮影してもらいました。
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午後は、2日目にあまり掃除する時間がなかったので、
収蔵庫の残った場所をみっちりと掃除してもらいました。

最後に、職場体験三日間の感想を聞いてみました。
「この三日間でとても学びました。例えば仕事の多さです。僕は昔から博物館の仕事は監視くらいだろうと思っていましたが、とても多くてびっくりしました。監視も仕事の一つですが、ほかにも学芸員、受付、総務課、電気・空調管理など、色々な仕事があったので驚きました。僕は小さいときに、博物館に来た時にガラスをペタペタさわってましたが、ガラス拭きも仕事の一つで、僕も考え直しました。博物館は楽そうに見えますが、実は大変で、お客さんになった時は気持ちを入れ替えていきたいです。三日間とても良い経験になりました。どうもありがとうございました。」
「僕たちがしてきた三日間の職場体験では、普段入ることのできない収蔵庫の掃除や、受付などの接客など、たくさんの仕事をすることができました。仕事は大変なんだと、自分の身をもって知ることになりましたが、良い経験となりました。受付でていねいにチケットを渡す大変さ、ショップで商品を管理する大変さ、広い収蔵庫に掃除機をかける大変さ、昔の書物をカメラで撮影しつづける大変さがとてもわかりました。どんな仕事をしても、大変なものは大変なんだと気づかされました。この三日間してきたことはとても良い思い出になったと思います。いつかこの経験が活かせる日が来るとうれしいです。」

三日間お疲れ様でした。
今回職場体験に来てくれた生徒さんは、
今までで一番おとなしかったのではないかと思います。。。
あまりにも静かすぎて面白くないのかな、と不安にもなりましたが、
良い経験が出来たと言ってくれてありがたいです。
色々な仕事をしてもらったので、
自分は何に向いているのか、どんな仕事が好きなのかも
少しわかったのではないでしょうか。この経験を是非活かしてくださいね。

   (学芸員 坂本亮太)

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