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スポット展示「疫病平癒の霊験仏 ―杉原薬師寺の薬師如来坐像と弘法大師伝承―」(5月16日~6月21日)

スポット展示
疫病平癒の霊験仏 (えきびょうへいゆ の れいげんぶつ)
―杉原薬師寺の薬師如来坐像と弘法大師伝承―
会期:令和2年(2020) 5月16日(土)~6月21日(日)
会場:和歌山県立博物館 2階学習室スポット展示コーナー

 現在、新型コロナウイルス感染症が世界に広がり、市民生活にも大きく影響を及ぼす未曾有の事態となっています。
 歴史的には人間社会は常に疫病(えきびょう)の脅威にさらされ続けており、現代の感染症対策では、医療とともに高度な衛生観念の普及が重要な役割を果たしていて、清潔にして身を守る私たち自身の行動が感染症封じ込めの一翼を担っています。
 一方、前近代においては、人々は流行病は疫神(えきじん)や悪鬼のしわざと考え、それらを祓い清めたり、祠に祀って鎮めたほか、神仏にすがって悪疫退散を祈願しました。八坂神社(祇園社)の祭神である牛頭天王や各地で信仰を集める薬師如来がその代表です。

 紀の川市杉原(すいばら)の薬師寺にまつられる本尊の薬師如来坐像は、像高55.7㎝、檜の一木から頭体の根幹部分を彫り表した一木造で、内刳りはありません。円満な頭部の輪郭や抑揚の穏やかな体型、緊張を解いて座る姿勢など平安時代後期の作風を示し、威厳あるその表情にはやや古風な表現も見られ、造像時期は11世紀まで遡るとみられます。
 薬師寺に伝わる貞享5年(1688)に記された「紀州那賀郡杉原村竜門山薬師寺縁起」(『粉河町史』所収)には、天長3年(826)の秋、国内に疫病が流行した際、弘法大師が像高一尺七寸の薬師如来像を造って7日間祈願したたところ、病人は癒え、死者も蘇る奇瑞が起こった。その霊験を聞いて人々が多数お参りにやってきたので、この仏像を本尊として薬師寺を建てた、と語られます。もちろん薬師如来坐像の造像時期は弘法大師(空海)の在世時までは遡りませんが、繰り返し流行する疫病による病や死への恐怖から人々を救うため、高僧に仮託して、本尊の霊験を語るこの縁起が形成されたのでしょう。

 疫病平癒の霊験仏の紹介を通じて、疫病と向き合い続けてきた私たちの苦難と克服の歴史に思いを馳せるとともに、今般の感染症流行の早期収束を心から願いたいと思います。(主任学芸員 大河内智之)

薬師如来坐像 薬師寺蔵 - コピー (2) DSC_7805 - コピー DSC_7807 - コピー
薬師如来坐像 平安時代(11世紀) 薬師寺蔵  ※画像クリックで拡大します。
薬師寺縁起 - コピー (2)
「紀州那賀郡杉原村竜門山薬師寺縁起」(『粉河町史』第5巻所収) ※画像クリックで拡大します。

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