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コラム3「玉洲が所蔵していた朱竹図」

「桑山玉洲のアトリエ」展のコラム3回目です。

今回は、玉洲が所蔵していた中国の絵の中から
「朱竹図(しゅちくず) 雪僲筆(せっせんひつ)」をご紹介しましょう。
朱竹図 雪僲筆 個人蔵(軽)
(画像をクリックすると拡大します)
朱竹図 雪僲筆
(しゅちくず せっせんひつ)
紙本金箋著色 1幅 縦106.2㎝ 横30.6㎝
中国・清時代(17~18世紀)ヵ 個人蔵

この絵は、桑山家に伝わった中国の絵のうちの一つです。

掛軸(かけじく)の裏に貼(は)られた外題(げだい)というタイトルを示す付箋には、「幽興堂(ゆうきょうどう)」(朱文長方印(しゅぶんちょうほういん))・「玉」「洲」(朱文連印(しゅぶんれんいん))という玉洲のハンコが捺(お)されています。
朱竹図 雪僊筆 外題(軽) 朱竹図 雪僊筆 外題 拡大(軽)(いずれも画像をクリックすると拡大します)

また、この絵を収納する箱の蓋裏にも、「明光浦桑嗣粲家蔵印(めいこうほそうしさんかぞういん)」(白文長方印(はくぶんちょうほういん))という玉洲のハンコを捺した絹が貼られているのです。
朱竹図 雪僊筆 箱蓋裏(軽) 朱竹図 雪僊筆 箱蓋裏 所蔵印(軽)(いずれも画像をクリックすると拡大します)

こうした外題や箱に捺された玉洲のハンコは、もともとのこの絵の表具の裏に捺されていたものを、表具をやり直した際に切り取って、新しい現状の表具や箱に貼ったものと想像されます。
いずれにせよ、このような外題や箱書から、この絵は玉洲が持っていたことがわかる貴重な作例といえるのです。

画面には、やや細い三本の竹の幹が描かれ、ほぼまっすぐ伸びたそれぞれの幹の上部には、風にひるがえる竹の葉が勢いよく配されています。竹は、全て朱で描かれていて、とても鮮やかです。

下地の紙には、所々にやや大きめの金粉(きんぷん)が散らされているため、
朱竹図 雪僊筆 金箋1(軽) 朱竹図 雪僊筆 金箋2(軽)

朱竹図 雪僊筆 金箋3(軽)
(いずれも画像をクリックすると拡大します)(黄色く見える部分が金粉です)

金箋紙という金粉を装飾的に散らした紙であることがわかります。ただ、全体に紙がかなり灰色がかっているようですので、あるいは、当初は金粉以外にも何か雲英(きら)や銀粉(ぎんぷん)のようなものが施されており、それが酸化して灰色になったのかもしれません。

ところで、こうした濃く鮮やかな朱色で竹を描く朱竹図は、伝説では、中国の北宋時代の詩人である蘇軾(そしょく、東坡(とうば)、1035~1101)が初めて描いたとされています。

逸話によると、蘇軾は試験のときに墨を持っていなかったので、代わりに朱で竹を描いたのだそうです。こうした蘇軾の逸話は、そもそも竹は墨のような黒色ではなく、青を墨に変えて描いているのだから、墨を朱に変えることもできるだろうとの解釈を生みました。また、蘇軾に朱竹を描いてもらった人々が、みな裕福になったという伝説も生まれたことから、朱竹は吉祥を招く主題としても流行したようです。

また、竹は、中国では「祝(しゅく)」とよく似た発音であることから、祝を意味し、竹のみを描いた絵は、この絵の左脇の題にもあるように、しばしば「華封三祝(かほうさんしゅく)」とも呼ばれました。

「華封三祝」とは、中国の堯帝(ぎょうてい、生没年未詳)が華(か)という町を視察したときに、華の封人(ほうじん、町の護衛にあたる人々)が、堯帝のために、三多(多福・多寿・多子)を祈ったことにちなむ言葉で、『荘子(そうし)』天地編に登場する故事(こじ)です。

この絵に描かれている竹が、三本であるのは、この「三祝」と関係があるのかもしれません。

なお、筆者の雪僲(せっせん、生没年未詳)については、記録の中に見出せない画家で、その伝記などについての詳細は、よくわかりません。金箋の紙質や、勢いのある画風から、筆者は中国人画家と想像されますが、日本人画家の可能性も含め、今後の検討が必要です。

いずれにせよ、玉洲がこの絵を所蔵していたことは重要で、実は、玉洲も、この絵から影響を受けたのではないかと見られる「朱竹図」を描いています。
朱竹図 桑山玉洲筆 個人蔵(軽) 朱竹図 雪僲筆 個人蔵(軽)
右側が玉洲が所蔵していた雪僲の朱竹図で、左側が玉洲が描いた朱竹図です。

描かれている竹の本数などは異なりますが、絵の左下に、少し小さめの竹を配置している点や、絵の上部で葉を広げる竹の形態など、似ている部分も少なくありません。
玉洲自身も、絵の左の文章の部分で、蘇東坡が始めたという朱竹図の歴史について記しています。

玉洲が描いた朱竹図だけを見ていても、元になった絵があるようには見えませんが、こうした玉洲が所蔵していた絵の中から、朱竹図が出てくると、何らかの影響関係を考えてみたくなりますね。

展示室では、これらを横に並べて展示しています。
朱竹図 展示状況(軽)

二つの朱竹図の展示は、本日、5月12日(日)までです。間に合う方は、ぜひ、博物館へお越しください。(学芸員 安永拓世)

特別展 桑山玉洲のアトリエ―紀州三大文人画家の一人、その制作現場に迫る―
和歌山県立博物館ウェブサイト
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