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コラム「古神宝を守ってきた唐櫃(からびつ)」

今回の箱と包みを開いてみれば―文化財の収納法―」のコラムでは、
「熊野速玉大社の古神宝を守ってきた唐櫃(からびつ)」について、ご紹介しましょう。

神社にまつられている神々のためにささげられた宝物のことを「神宝(しんぽう)」と呼びます。神社では、一定の年数ごとに、建物を作り替える「遷宮(せんぐう)」をおこないますが、神宝も、そうした遷宮や特別な行事のときに新しく作られ、古いものと入れ替えられました。「古神宝(こしんぽう)」とは、こうして新たな神宝を奉納した際に、神前から下げられた古い神宝のことです。

熊野三山の一つとして古くから篤い信仰を集めてきた新宮の熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)には、およそ1000点もの古神宝が伝えられており、全て国宝に指定されています。武具・装束・手箱・鏡など様々な調度品からなるこれらの古神宝は、熊野速玉大社にまつられている12の神々に奉納されたもので、全国的に見ても圧倒的な質と量をほこるものです。これらの古神宝の大半は、文書や目録の記述から、明徳元年(1390)の遷宮に際し、後小松天皇(1377-1433)・後円融上皇(1358-93)・足利義満(1358-1408)および諸国の守護により調進されたことがわかっており、制作年代と奉納経緯の判明する古神宝として意義深いといえるでしょう。また、目録の記述から12の神々のどの神に奉納されたかがわかるほか、古神宝の細かい文様や大きさの差に、まつられている12の神々のランクや、奉納者の地位が反映されている点も見逃せません。

こうした古神宝を収納し、600年の時を越えて守り伝えてきたのが、12の神々にそれぞれ奉納された「朱塗唐櫃(しゅぬりからびつ)です。唐櫃とは高さのある足(脚)のついた箱のことで、こうした箱は、高床式で底が床から離れているため、風通しが良く、湿気や虫の被害から中に入っているものを守り、宝物を長期保存するのに適していました。正倉院の宝物も、こうした足のついた唐櫃におさめられており、熊野速玉大社に多くの古神宝が残されているのも、唐櫃におさめられていたからと考えられるでしょう。

朱塗唐櫃(熊野速玉大社蔵、国宝)小
(画像をクリックすると拡大します)

写真に挙げたのは、そうした熊野速玉大社に残る唐櫃の一つで、12合のうち3番目に大きな唐櫃です。蓋の内側にも、3番目に高いランクの神をまつる「証誠殿(しょうじょうでん)」という社殿の名前を記したラベルが貼(は)られており、証誠殿に奉納されていた高い可能性を物語っています。12合の唐櫃の中には、金具に文様のないものもありますが、この唐櫃には、唐花唐草文様をあらわした華麗な金具が用いられており、ささげられる社殿にまつられている神のランクに応じた大きさや金具が選ばれたこともうかがえます。

朱塗唐櫃 隅金具(画像をクリックすると拡大します)

このように、文化財や宝物を収納する箱は、物理的に中の文化財を守るとともに、外側を金具や装飾で飾り、荘厳することで、中に収納されているものがいかに貴重であるかを示すという役割も担ったのです。(学芸員 安永拓世)


企画展 箱と包みを開いてみれば―文化財の収納法―
和歌山県立博物館ウェブサイト

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