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ハンコの基礎知識「ハンコが押される位置とその区別」

ハンコにあらわされている文字は、慣れないと、なかなか読みにくいものです。

今回は、「ハンコって何?」の展覧会にあわせて、「ハンコの基礎知識」と題して、ハンコの文字を読むためのちょっとした豆知識やポイントを少し解説してみたいと思います。

まず、最初は、書や絵に押されるハンコが、押される場所や用途に応じて、いくつかのルールや区別があったということをご紹介しましょう。

書や絵に押されるハンコは、大きく分けて、次の三種類に区別されます。

(1)関防印(かんぼういん)・引首印(いんしゅいん)
文章の最初や、右上に押されるハンコです。「はじまり」を示し、文章や絵が途中で切られるのを防ぎました。ハンコの中には、好きな文章の一節などが彫られました。

(2)落款印(らっかんいん)
文章の最後や、絵のサインのあとに押されるハンコです。「終わり」を示し、その書や絵の作者であることを証明しました。ハンコの中には、作者の名前や、書や絵のサインに使う別名である雅号(がごう)が彫られました。二つのハンコがセットで押される場合が多いです。

(3)遊印(ゆういん)
比較的自由な場所に押されるハンコです。主に絵の作品に押され、ハンコの中には、好きな文章や絵などが彫られました。

では、実際の作品を例に、どこにどんなハンコが押されているか見てみましょう。


七言絶句書 祇園南海筆 館蔵32(小)
この書は、紀伊藩の儒学者であり、日本における初期の文人画家の一人でもある祇園南海(ぎおんなんかい、1676-1751)という人物が書いた七言絶句の漢詩です。

 【翻字】
   渡頭草靄緑氤氳、村路
   返々幾径分、不向樵者問山寺、隔渓
   先覩一株雲 南海源汝彬

右上に押されている七言絶句書 祇園南海筆 関防印「鏡華水月」(陽文長方印) 館蔵32(小)が関防印で「鏡華水月(きょうかすいげつ)」という文字があらわされています。
一方、左下に押されている二つのハンコ
七言絶句書 祇園南海筆 落款印「源汝フン印」(陰文方印) 館蔵32(小)
七言絶句書 祇園南海筆 落款印「湘雲主人」(陽文方印) 館蔵32(小)
が落款印で、
上は「源汝份印(げんじょふん)」(右上から2行の縦書きを読む順で読んでください)
下は「湘雲主人(しょううんしゅじん)」
という文字があらわされています。


風竹図 桑山玉洲筆 館蔵501(小)
次に挙げたのは、和歌浦出身の文人画家である桑山玉洲(くわやまぎょくしゅう、1746-99)が描いた竹の絵です。
右側の「桑嗣幹寫(そうしさんしゃ)」というサインの左に押されている二つのハンコ
風竹図 桑山玉洲筆 落款印「桑嗣幹字伯自号玉洲陳人」(陰文方印) 館蔵501(小)
風竹図 桑山玉洲筆 落款印「茂松清泉」(陽文方印) 館蔵501(小)
が落款印で、
上は「桑嗣幹字伯自号玉洲陳人(そうしかん、あざなはくてい、みずからごうす、ぎょくしゅうちんじん)」
下は「茂松清泉(もしょうせいせん)」
という文字があらわされています。

一方、左下に押された
風竹図 桑山玉洲筆 遊印「杏樹壇辺漁父桃花源裏人家」(陽文長方印) 館蔵501(小)
が遊印で、「杏樹壇辺漁父桃花源裏人家(きょうじゅだんぺんのりょふ、とうかげんりのじんか)」
という文字があらわされています。
これは、中国の詩人である王維(おうい)の「田園楽(でんえんらく)」という漢詩の一節です。

基礎知識というわりには、ちょっと難しかったかもしれませんが、こうした押されている場所によるハンコの名前や用途の違いを少しでも分かっていると、そのハンコの中にどんな内容の文字が書かれているかのヒントになります。
ハンコの中の文字を読むのは、まだまだ難しいかもしれませんが、少しずつでも読めるようになるとおもしろいものです。
今後も、こうしたハンコの基礎知識をご紹介していきます。ご期待ください。(学芸員 安永拓世)


企画展 ハンコって何?
和歌山県立博物館ウェブサイト

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