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ミュージアムトークを行いました(4)

 今日(30日)、午後1時30分から、8回目のミュージアムトークを行いました。
台風一過にもかかわらず、17人の方に参加していただきました。

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(遍照寺本尊の前での展示説明)

 今回は、安楽川地域から少し紀ノ川をさかのぼった、かつらぎ町妙寺の遍照寺と覚栄のかかわりを紹介します。

空からみた妙寺周辺 (画像をクリックすると拡大します)
(空からみた妙寺地区周辺、赤で囲んだのが遍照寺、青で囲んだのが畑谷池)

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(遍照寺の現在の本堂)

 遍照寺の旧本堂は、天正15年(1587)に再建されました。

遍照寺・棟札(表)        遍照寺・棟札(裏)    遍照寺・棟札(裏・拡大)(画像をクリックすると拡大します)
〈表〉        〈裏〉(全体)   〈裏〉(部分拡大)
(遍照寺旧本堂棟札、かつらぎ町指定文化財、遍照寺蔵)

 このとき制作された棟札の表面には「天正十五年二月十八日」とあり、上端には三つの種子(しゅじ、中央に大日如来、向かって右下には薬師如来、左下には阿弥陀如来)が記されています。
一方、裏面の上半分には願主が住職の頼恵で、大工は五所の兵衛であることなどが記され、下半分には妙寺村の結縁者として、二位公(覚栄)を筆頭に、47人の集衆(有力者)の名前が記されています(この時期、応其は秀吉の島津攻めに同行していました)。

妙寺村氏人中雑記之条々(冒頭)
(妙寺村氏人中雑記之条々、遍照寺蔵)

 寛文7年(1667)の妙寺村氏人中雑記之条々によれば、妙寺村では覚栄は10石の寄進をもって、春と秋に陀羅尼会(だらにえ)が行われるようになった、と記されています。

ゆかりの地 畑谷池 340 ゆかりの地 畑谷池 326
(畑谷池)                     (五輪塔、かつらぎ町指定文化財)

 ところで、遍照寺から900mほど北に向かったところに、畑谷池という池があります。
この池の中心にむかって、北から南へ半島状に突き出た先端部に五輪塔があります。
この五輪塔は、記された銘文から木食応其が妙寺惣衆中(妙寺村の有力者)を動員して、畑谷池の整備(池の拡張)を行ったことを記念して、天正17年8月29日に建てられたことがわかります。
応其の事績を記した諸寺諸社造営目録には、「妙寺の池 都合弐百石」と記されていますが、この「妙寺の池」が現在の畑谷池であると考えられます。
 天正17年から同18年にかけて、応其は紀ノ川沿い(現在の橋本市から紀の川市までの)の地域振興事業の一環としていくつかの池を改修していますが、畑谷池の改修もその一つでした。

D2X_0014 阿弥陀
(阿弥陀如来坐像、かつらぎ町指定文化財、遍照寺蔵)

 畑谷池の改修が終わった翌年(天正18年)7月に、遍照寺では阿弥陀如来坐像が制作されています。
墨書銘から願主は応其と覚栄で、奈良仏師によって制作されたことがわかります。

D2X_0060 大日  D2X_0116 薬師
(大日如来坐像、遍照寺蔵)  (薬師如来坐像、遍照寺蔵) いずれもかつらぎ町指定文化財

 残りの2体(大日如来坐像・薬師如来坐像)は、すぐには制作されず、阿弥陀如来坐像の制作から5年後・6年後の文禄4年(1595)・同5年に制作されています。この2体の仏像は、覚栄が京都の七条仏師に命じて制作したと考えられています。
2体の仏像の制作が遅れたのは、この時期行われた秀吉による朝鮮出兵が影響したのかもしれません。
 棟札の記載から、当初から遍照寺本尊として、大日如来、薬師如来、阿弥陀如来の三尊を制作しようとしていたことは明らかですが、その制作途中で仏師が交替するのはきわめて珍しいようです。
 京都周辺では、天正19年の豊臣秀長(1540?91)の死を境に、奈良仏師が没落し、七条仏師が台頭するようになるといわれています。
遍照寺の本尊像制作にみられる仏師集団の交替は、仏師の勢力図が塗り替えられたことを意味するもので、こうした動きに覚栄が連動していたことがわかります。

 仏師集団の交替については、当館の大河内学芸員執筆のコラム「木食応其と桃山時代の仏師」(『特別展 没後四〇〇年 木食応其 ―秀吉から高野山を救った僧―』和歌山県立博物館、2008年)を、また、紀ノ川流域に残る木食応其ゆかりの石造物については今回の特別展図録の前田執筆のコラム「石像物に刻まれた応其の事績」をご参照ください。

 次回のミュージアムトークは、最終日の11月7日(日)午後1時30分から行います。
特別展の会期も、あと7日となりました。この機会に、ぜひ皆さんのご来館をお待ちしています。

(主任学芸員 前田正明)

→和歌山県立博物館ウェブサイト
→特別展 京都・安楽寿院と紀州・?あらかわ?
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