粉河寺展コラム「童男行者と粉河寺」 平安時代末期に描かれた国宝・粉河寺縁起は、粉河観音の造像と寺院の創建にまつわる縁起と、霊験あらたかな粉河観音が長者娘の病を治した縁起の、二つの物語から構成されています。その前半と後半の二つの物語に共通して登場する人物がいます。 童行者(わらわぎょうじゃ)、あるいは童男(どうなん)行者とよばれ、子どもでありながら、行者、すなわち修行僧の姿に表された不思議な存在です...
粉河寺展コラム「粉河観音の鞘付帯と紅袴」 粉河寺の千手観音は、童子に姿を変えて現れ願いをかなえてくれる「生身(しょうじん)」の観音として信仰されました。その霊験あらたかな観音の由緒を記した粉河寺縁起に、粉河観音独特のある特徴的な姿が語られています。河内国の佐大夫の子が重い病気にかかり、童行者がやってきて千手陀羅尼を唱えるとたちまち平癒した。お礼の品を断り、ただ鞘を付けた帯だけを取り粉河に去ってしま...
粉河寺展コラム「霊験あらたかな粉河観音」 西国三十三所第三番札所の粉河寺は千手観音を本尊とします。千手観音は11の顔、千本の手、そして手のひらに千の眼を有して、あらゆる世界の苦しむ人々を救済すると『千手陀羅尼経』に記されます。千の手は、実際には四十二手で表すのが一般的ですが、その多数の手は人々に確かに救済が及ぶことを実感させるものです。 11世紀初めごろ、清少納言が記した『枕草子』に「寺は、壺坂。笠置...