2008-08

コラム奇跡の仮面(4) 進化する面掛行列

進化する面掛行列 画像クリックで拡大します。
【子どもを驚かす面掛】
進化する面掛行列

 和歌祭の面掛行列は、現在百面(ひゃくめん)と呼ばれることが一般的である。この呼び方は近代になって広まったもので、江戸時代では面掛(めんかけ)、仮面被(かめんかぶり)などと呼ばれている。面掛はその呼び名一つとっても、江戸時代とそれ以降とでは異なる点が少なくない。
 例えば面掛では飾りを付けた傘を手にするが、しかしこれは江戸時代にはなかった持ち物で、近代になってから風流傘(ふりゅうがさ)という芸能の要素が追加されたものらしい。また高下駄も江戸時代にはなく、これも田楽(でんがく)という芸能の要素が加わったもの。また子どもを驚かせ泣くと病気をしないという獅子舞に似た所作もあるが、これも近代になって追加されたもののようだ。そして現在、仮面を頭に乗せて、顔にフェイスペインティングを施して仮面性を獲得するという大きな変化が生じている。
 面掛は古い要素と新しい要素を組み合わせながら、行列の祝祭性を保つ役割を担うために進化し続けている。(学芸員大河内智之)

企画展「奇跡の仮面、大集合!―紀州東照宮・和歌祭の面掛行列―」
「奇跡の仮面、大集合!」図録販売中
和歌山県立博物館ウェブサイト

面掛(百面)、博物館で大あばれ!

本日、8月23日、特別イベント「面掛(百面)が博物館にやってくる!」を開催いたしました。たくさんのお客様にご参加いただき、まことにありがとうございます。
仮面展示解説 (画像クリックで拡大)
まずは展示会場で「奇跡の仮面、大集合!」の展示解説を行い、和歌祭の面掛行列についてお話させていただきました。
百面お出迎え (画像クリックで拡大)
そしてその後ロビーに移動して、たくさん参加してくれた子どもたちといっしょに、「おーい、ひゃくめーん」と大きな声で呼びかけると・・・、
百面登場 (画像クリックで拡大)
面掛(百面)の登場です!ちなみにこの仮面行列は、江戸時代には主に「面掛」と呼ばれ、近〜現代には主に「百面」と呼ばれています。現在の面掛(百面)の代表的な行動は・・・、
百面怖い〜 (画像クリックで拡大)
子どもを驚かせたり、泣かせたりすること!せっかく呼びかけてくれた子どもたちには悪いことをしました・・・。でも、面掛(百面)に驚かされると、病気をしないと言われています。獅子舞とも共通する、破邪の役割を担っているのです。泣いちゃった子どもたちには、飴をあげました。ごめんネ。
百面のようす (画像クリックで拡大)
面掛(百面)は、江戸時代以降、飾りをつけた傘を持ったり、高下駄を履いたり、フェイスペインティングを行ったりと、どんどん進化を遂げています。和歌祭の行列の中で、大きな賑わいをつくり、祝祭性を盛り上げる役割を担い続けるために、常に現代的なアレンジが加えられてきたようです。これからも仮面行列という本質を守りながら、進化を遂げていくことでしょう。
百面記念撮影 (画像クリックで拡大)
記念撮影をパチリ。今回ご登場いただいたのは、左が面掛(百面)の世話役をなさっている佐野さん(シンガーソングライター佐野安佳里さんのお父さん!)、右が辻さんです。本当にありがとうございました。
仮面をつけた子ども (画像クリックで拡大)
博物館ロビーでは、実際に面掛(百面)で使用している仮面や衣装を着用していただけます。会期は残り一週間ほどです。是非たくさんのお面に会いに、和歌山県立博物館へ足をお運び下さい。お待ちいたしております。(学芸員大河内智之)

企画展「奇跡の仮面、大集合!―紀州東照宮・和歌祭の面掛行列―」
「奇跡の仮面、大集合!」図録販売中
和歌山県立博物館ウェブサイト

面掛(百面)が博物館にやってくる!

 8月23日(土)に行う企画展「奇跡の仮面、大集合!―紀州東照宮・和歌祭の面掛行列―」の展示解説で、博物館にほんものの面掛が登場します。
 この面掛(百面)に驚かされると病気をしないといわれ、あちこちで子どもを驚かせている光景は和歌祭の風物詩です。みなさんも面掛に驚いて、暑い夏を吹き飛ばす元気をもらいましょう!
 当日は展示解説を1時30分から行います(約20分・入館料必要)。展示解説終了後、博物館ロビーに面掛(百面)が登場します(入館料不要)。
 面掛を間近に体験できるこの機会に、ぜひ県立博物館にお越し下さい!(学芸員大河内智之)

企画展「奇跡の仮面、大集合!―紀州東照宮・和歌祭の面掛行列―」
「奇跡の仮面、大集合!」図録販売中
和歌山県立博物館ウェブサイト

コラム奇跡の仮面(3) 仮面がつなぐ時と人

面掛新奉納仮面 画像クリックで拡大します。
【あらたに奉納された仮面45面】
仮面がつなぐ時と人

 和歌祭の面掛行列は高下駄を履いて賑やかに練り歩くが、結果的に転倒や仮面の落下という事態も起こる。仮面はその都度補修され、色を塗り直され、徐々に仮面本来の情報を失いつつあるのが現状である。そういった状況の中、古い仮面の保存のためにNPO和歌の浦万葉薪能の会と能面文化協会の協力によって新しい仮面が製作、奉納され、その数は現在45面に達している。
 この仮面奉納事業の発案は久保博山さん(能面文化協会会長)。久保さんが昔、能面製作を始められた頃、面掛の仮面を見て感銘を受けたことから、破損が進行しているそれら仮面の保存のためにこの事業を思い立たれた。仮面の材料費のみ一般から募り、能面文化協会の皆さんとともに無償で新しい仮面を製作し、面裏に支援者の名前を刻んで奉納されている。久保さんの仮面への思いを出発点に、和歌祭の未来を見据えて面掛の仮面に多くの人が関わりはじめている。面掛において仮面は、人と人とを結び合わせ、そして過去、現在、未来の時間をつなぐ結節点として機能しているようだ。(学芸員大河内智之)

企画展「奇跡の仮面、大集合!―紀州東照宮・和歌祭の面掛行列―」
「奇跡の仮面、大集合!」図録販売中
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コラム奇跡の仮面(2) 徳川頼宣と面掛

奇跡の仮面コラム2 天下一友閑焼印を持つ能面・小尉(こじょう)
画像クリックで拡大します。

徳川頼宣と面掛

 和歌祭の面掛行列で使用されてきた古い仮面97面には、本来の用途を離れ転用された能・狂言面が53面含まれている。このうち江戸時代製作の能面に限ると31面で、中には「天下一友閑」という焼印がおされたものが7面含まれている。
 天下一友閑とは、江戸時代前期の仮面製作者、出目満庸(でめみつやす・?〜1652)のこと。天下一は優れた職人に許された称号で、そういった名人の作った面は、能が武家の式楽(正式な場で行う歌舞音曲)であった江戸時代においては入手が大変難しかった。例えば紀伊徳川家八代藩主重倫収集の能面が現在岩出市の根来寺に残されているが、能面158面中、友閑の面は6面である。31面中7面の比率は、突出した数字といえる。
 これだけの水準の仮面を集めることができたのは、和歌祭を創始し、自身も能の名人であった徳川頼宣をおいて考えられない。面掛の仮面は、頼宣と能の深いつながりを示す資料として、今後注目されるだろう。(学芸員大河内智之)


企画展「奇跡の仮面、大集合!―紀州東照宮・和歌祭の面掛行列―」
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コラム奇跡の仮面(1) 面掛行列とは何か

面掛行列とは何か 画像クリックで拡大します。

面掛行列とは何か

 和歌山市の南、風光明媚な和歌浦には、徳川家康を祭神としてまつる紀州東照宮がある。その春の例大祭は、和歌祭(わかまつり)と呼ばれる。和歌祭では、神輿が社殿から御旅所へと移る際、様々な扮装をこらした多種多様の行列が練り歩くが、その一つが面掛(めんかけ)である。地元では百面(ひゃくめん)という呼び名の方が通りがよい。面掛はその名称の通り仮面を付けて練り歩く仮装行列で、面と頭巾をかぶって華麗な装束を身につけ、杖や飾りをつけた傘を持ち高下駄を履くという大変賑やかな一団である。
 この面掛行列で使われてきた仮面には、神事面・能面・狂言面・神楽面・鼻高面からなる総数97面に及ぶ仮面が含まれている。このうち優れた出来栄えの能面の収集には紀伊藩主の強い関与があり、庶民的な神楽面の追加には和歌浦の村人の関与があるらしいことが分かってきた。
 仮面は、知られざる和歌山の歴史を雄弁に物語る重要な資料である。(学芸員大河内智之)

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