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紀伊藩士三浦家について

三浦家はもと平氏の流れをくみ、6代為通の時、相模国三浦に居住し、「三浦姓」を名乗りました。
のち安房国に移ると「正木姓」に改名し、為春の代に「三浦姓」に復したといわれています。
為春の異父妹が徳川家康に仕え、頼宣を産むという縁故もあって、
慶長3年(1598)に家康から3000石の知行が与えられ、同8年には頼宣の傳役を命じられました。
元和5年(1619)、為春は頼宣の紀伊入国に同行し、8000石が与えられています。
現存する三浦家文書の多くは、和歌山大学紀州経済史文化史研究所が所蔵しています。
その内容は、知行目録や知行所支配に関係するもののほか、家老職としての公的な日記も多く含まれています。

13 遠州知行割帳D3A_9292 13 遠州知行割帳D3A_9289
遠州知行割帳 和歌山大学紀州経済史文化史研究所蔵 〔展示番号13〕

25 年中日記D3A_9523 
年中日記 和歌山大学紀州経済史文化史研究所蔵 〔展示番号25〕

これらの文書群は、紀伊藩の貴重な藩政史料として、昭和63年(1988)に和歌山県指定文化財に指定されています。
ただ、三浦家に伝来した資料のなかには、流出したものも少なくありません。
今回展示している個人蔵の資料もその一部といえます。

15 家紋桐唐草鳳凰文切平緒DSC_0423 家紋桐唐草鳳凰文切平緒 個人蔵 〔展示番号15〕

つづく

今日、午後1時30分からミュージアムトークを行い、16人の方の参加がありました。

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次回のミュージアムトークは25日(日)です。

(主任学芸員 前田正明)

→企画展「紀伊徳川家の家臣たちⅡ」

コラム 家紋瓦と系譜書

家紋は中世以来、戦場での敵味方を識別するために旗や幟に家の印(「旗紋」)をつけ、その存在を明らかにするものとして使用されました。
上級武士の場合は、陣幕などに自家の紋(「幕紋」)をつけた場合もあったようです。
家紋は、まさに戦う際の団結の象徴ともいえるものでした。
 ところで、家紋瓦が盛んに使用されるようになるのは豊臣秀吉のころといわれます。
慶長3年(1598)に行われた大坂城三の丸の造営で、大名屋敷に家紋瓦が使われたことが発掘調査によって明らかになりました。和歌山城の瓦に、浅野家や徳川家の家紋瓦が使われていたことはよく知られていますが、18世紀ごろの安藤家や水野家の屋敷にも家紋瓦が使用されていたことが発掘調査から明らかになりました。

08 下がり藤紋鬼瓦D3A_0566 下がり藤紋鬼瓦 (公財)和歌山市文化スポーツ振興財団蔵 〔展示番号8〕

08 下がり藤紋軒丸瓦D3A_0572 下がり藤紋軒丸瓦 (公財)和歌山市文化スポーツ振興財団蔵 〔展示番号8〕

10 沢瀉紋軒丸瓦D3A_0555  沢瀉紋軒丸瓦 (公財)和歌山市文化スポーツ振興財団蔵 〔展示番号10〕

 寛政年間(1789~1801)、藩では家臣に系譜書の提出を命じます。身分制度が緩み始めるなかで家格を重視しようとする動きと、費用がかさむ特注品(家紋瓦)が使われる動きとは関係するかもしれません。

つづく

現在、和歌山県立博物館では企画展「紀伊徳川家の家臣たちⅡ」を開催しています。ご来館をお待ちしています。

(主任学芸員 前田正明)

→企画展「紀伊徳川家の家臣たちⅡ」

コラム 滴水瓦と朝鮮侵略

滴水瓦とは朝鮮半島に由来する軒平瓦の一種で、逆三角形の瓦当部をもっているのが特徴です。
この滴水瓦は、和歌山城内の発掘調査でも出土しています。
滴水瓦が日本に伝わるきっかけとなったのは、豊臣秀吉が行った朝鮮侵略(1592年の文禄の役〔壬辰倭乱〕と1597年の慶長の役〔丁酉倭乱〕)でした。
このとき、朝鮮半島から宮殿や寺院に使用されていた「李朝瓦」が日本に運ばれ、瓦職人も連れてきたといわれています。
関ヶ原合戦後、朝鮮へ渡海した武将(加藤清正や浅野幸長など)が築いた城などには、滴水瓦が使われました。
浅野幸長の居城であった和歌山城では、違鷹羽紋(浅野家の家紋)・蓮華文・唐文・菊文の4つの文様の滴水瓦が出土しています。
最近行われた三の丸の発掘調査で、安藤家屋敷地や水野家屋敷地からも出土しています。

05 和歌山城下屋敷大絵図 其五 和歌山城下屋敷大絵図 其五(部分) 和歌山県立図書館蔵 〔展示番号5〕

08 唐草文滴水瓦D3A_0599 唐草文滴水瓦  (公財)和歌山市文化スポーツ振興財団蔵 〔展示番号8〕

08 下がり藤紋滴水瓦D3A_0578 下がり藤紋滴水瓦  (公財)和歌山市文化スポーツ振興財団蔵 〔展示番号8〕

10 沢瀉紋滴水瓦D3A_0545
沢瀉紋滴水瓦  (公財)和歌山市文化スポーツ振興財団蔵 〔展示番号10〕

つづく

現在、和歌山県立博物館では企画展「紀伊徳川家の家臣たちⅡ」を開催しています。ご来館をお待ちしています。

(主任学芸員 前田正明)

→企画展「紀伊徳川家の家臣たちⅡ」

コラム 紀州東照宮の造営と頼宣の家臣

慶長8年(1603)、頼宣は2歳で水戸城主となり、8歳で駿府城主となりました。

03 徳川頼宣像 徳川頼宣像 和歌山県立博物館蔵 〔展示番号3〕

この間、頼宣は父・家康から、家康自身の家臣(「御付」衆)が分与され、家臣団の中核をなしていました。

01 徳川家康像 徳川家康像 紀州東照宮蔵 〔展示番号1〕

そのなかでも最も有力な家臣が、のちに付家老と呼ばれる安藤・水野・三浦・久野の4家で、石高・格式で群を抜いていました。

04 安藤直次像 安藤直次像 和歌山県立博物館蔵 〔展示番号4〕

元和2年(1616)、家康が死去した際にも義直(尾張)、頼宣、頼房(水戸)の3人には、財産分与とともに、家臣の「人分け」も行われました。
頼宣は紀伊藩主となった元和5年以降も、新たな家臣を召し抱えています。
元和7年、頼宣は和歌浦に東照社(東照宮)を造営します。

02 相撲図絵馬 相撲図絵馬 紀州東照宮蔵 〔展示番号2〕

このとき普請奉行を勤めたのは安藤直次と彦坂光正で、家臣たちが寄進した石灯籠は今も参道沿いに建っています。

0251-1(和歌浦東照宮石段) 絵はがき(喜多村進コレクション) 和歌山県立博物館蔵

つづく

現在、和歌山県立博物館では企画展「紀伊徳川家の家臣たちⅡ」を開催しています。ご来館をお待ちしています。

(主任学芸員 前田正明)

→企画展「紀伊徳川家の家臣たちⅡ」



平成29(2017)年度職場体験② 河北中学校


今年2回目の職場体験は、和歌山市立河北中学校です。
生徒さん2人が、6月13日(火)~15日(木)の3日間、職場体験に来てくれました。

【初日 6/13】
まずは、毎回恒例、朝礼での挨拶・自己紹介をしてもらい、
そのあと、博物館の施設見学を行いました。
マイクロフィルムやカラーポジフィルムも、見てもらいました。
フィルムカメラはもとより、デジカメも使わないとのこと…。
スマホ時代になりました。

午後はさっそく、博物館広報のための、発送作業を手伝ってもらいました。
封筒に「ゆうメール」スタンプを捺します。
2人で、400通ほどに、スタンプを捺してくれました。

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次は、県内の学校にお送りする、常設展ワークシートの仕分けです。
10枚の束を作り、封筒に入れやすいようにしていきます。
1000枚以上を仕分けしてくれました!

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【2日目 6/14】
2日目からは、
展示室のガラス拭きを手伝ってもらいました。
今日はあまりガラスが汚れていなかったとか。

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その後は、夏休み企画展に関わり、収蔵資料の調査を行いました。
大きな絵を広げて、調書に記録したり、採寸をしたりしました。
手もきれいに洗い、協力して、丁寧に取り扱ってくれました。
今回見たのは、屏風の下書きと思われる絵です。
図録とよく見比べ、完成作品との違いを発見してくれました。

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この日の午後は、大仕事がありました。
社会科の先生方が集まる研究会での、展覧会の広報です。
この研究会には、博物館は毎年お邪魔させていただいています。

午後一番、発表の練習をして、いざ出発。
副館長の引率で、会場の明和中学校へと向かいます。

初めて訪れる場所で、
しかも大勢の先生の前で発表するとあって、ドキドキです…。
河北中学校の先生に会えたので、少しは緊張がほぐれたでしょうか。

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いよいよ発表の時間です。

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なんとか、無事、広報を終えることができました。

2人とも、大役お疲れ様でした。


【3日目 6/15】
最終日の午前も、ガラス拭きをしました。

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開館準備ができるころ、なんと、河北中1年生の団体が到着!

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後輩に見られながら働くのもいい経験だったかもしれません。

その後、収蔵品調査の補助をしてもらいました。
この日も、夏休み企画展に関わり、掛軸3幅を調査しました。

写真撮影のため、収蔵庫から外に運びます。
落としたりぶつけたりしないように、慎重に。

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昨日よりも調書に記入する内容が多く、大変でしたね。
絵に記された落款(落成の款識=完成したときに書き入れるサイン)や、
箱書も、正確に記録しました。

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絵に捺されるハンコもよく見て記録し、
「朱文方印」(朱色で文字が表された四角いハンコ)と
「白文方印」(白抜きで文字が表された四角いハンコ)を覚えました。

損傷の有無や彩色など、詳しいところも見て、
しっかり調査してくれました。

その後は、収蔵庫の清掃です。
虫菌害を防いで文化財を守るため、清掃は重要です。
2部屋の掃除機かけを、念入りに行ってもらいました。

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午後は、受付、ミュージアムショップ、監視、学習室の仕事を体験してもらいました。
ポスターの整理や、商品への値札貼りもしました。

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最後に、お2人に感想を聞いてみました。

「最初の館内見学のときに思ったより館内が広くて部屋の数も多かったのでびっくりしました。
正直体験する前は、あまりしんどくないイメージだったけど実際に
体験したら思ったよりしんどかったです。発送作業のときには
目標を通りこして全て終わらせることができたのでとてもうれしかったです。
資料調査では普段あまり使ったことのない漢字ばかりでてきたので
とても勉強になりました。そして、収蔵庫清浄のときには大変だったけど
きれいになったのでとても心がスッキリしました。
この体験で学んだことを日常生活に生かして今後改めて頑張っていきたいと思いました。
三日間しんどかったけれど、楽しかったです。」

「職場体験学習をさせていただいて、仕事の大変さや、重要さ、責任感を学ぶことができました。
1日目は、館内見学をして、博物館の広さと仕組みに驚きました。
2日目は、資料調査を手伝わせていただいて、仕事の大変さを学び、
午後に明和中学校で展覧会広報をさせていただいて、自分が知らないところで、
色んな重要なことをしていることを知りました。
3日目は、来館者応対をさせていただいて、監視はずっと座っているので大変で、
受付とショップでは、たくさん資料があって、一人でそこを担当するのは
責任があることを学びました。3日間、ありがとうございました。」

3日間の体験、重労働や緊張する機会も多く、疲れたことと思います。
毎日、先生が様子を見に来てくれたのは、心強かったですね。

将来社会に出ても、今回のように、丁寧にお仕事をしてくれるといいなあと思っています。
色々な仕事を手伝ってくれて、とても助かりました。
3日間ありがとうございました。

これからも気軽に、博物館に遊びに来てくださいね。
いつでもお待ちしています。

(学芸員 袴田舞)

平成29(2017)年度職場体験① 貴志中学校

平成29(2017)年度職場体験① 貴志中学校

今年も、職場体験(インターンシップ)の季節がやってきました!

第1回目は和歌山市立貴志中学校です。
生徒さん2人が、6月6日(火)~8日(木)も3日間、職場体験に来てくれました。

【初日 6/6】
まずは、毎年恒例、朝礼での挨拶・自己紹介をしてもらい、
そのあと、博物館の施設見学を行いました。
博物館の裏側まで全てを見学して、
たくさんの人が働いていることを知ってもらいました。
収蔵庫では、火縄銃や刀を実際に持ち、重さや手触りを体感しました。
職場体験以外では、めったにない機会です。

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その後はさっそく、博物館収蔵資料の調査を手伝ってもらいました。
午前の終わりに、写真に写し込むためのナンバーカードを作り、
午後は、実際に写真撮影をしました。
シャッターを切る役と、冊子をめくり、カードを差し替える役に分かれての作業です。


【2日目 6/7】
2日目からは、毎朝監視職員が行っている、
展示室のガラス拭きを手伝ってもらいました。
角度を変えて見ることでガラス表面の指紋を見つけるなど、
コツも教えてもらったようです。

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その後は、昨日に引き続き、収蔵資料の調査を行いました。
大きな絵を広げて採寸をしたり、
昔の人が書いた字を読んで調書に記入したり。

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上から紙が貼られて読みにくかった年号も、
角度を変えたり、光を当てたり、工夫して読んでくれました。

午後は、まず、夏休み期間に例年学校などに配布している、
ワークシートの発送準備をしてもらいました。
今回は、送り先を書いた短冊を切り分ける作業です。
手際よくこなしてくれました。

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それから、受付や監視など、来館者対応です。
この日は展示替期間のため企画展示室が閉まっていて、
さらに雨ということもあり、
来館される方が少なかったのですが…。

面掛仮面集合写真

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なんとか、チケットを切ったり、商品を手渡したりと、
お客様と接する仕事を経験できました。
みなさま、ご協力いただき、まことにありがとうございました。


【3日目 6/8】
最終日は、朝礼で、3日間の体験を終えるに当たっての挨拶をしました。

午前は、ガラス拭きの後、

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収蔵庫で、綿布団や梱包用の紐の整理と、掃除機かけです。
役割分担をして、テキパキと進めてくれました。

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2人のおかげで、新しく資料をお預かりするためのスペースを
確保することができました。

その後、資材倉庫へ行き、10日(土)からの企画展で展示する、
写真パネルを作ってもらいました。

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印刷した写真を、空気が入らないように糊つきパネルに貼り付けて、
端をカッターでまっすぐに切っていきます。

出来具合を展示の担当者に見てもらい、OKが出ました。
床にパネルを並べて、実際に貼るところをイメージします。

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午後は、写真パネルの下に付けるキャプションと、タイトルパネルを切ります。

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さあ、いよいよ実際にパネルを展示します。

両面テープと養生をテープを組み合わせて、
壁に痕が残らないように、貼り付けます。

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メジャーで床からの距離を測り、なるべくパネルが曲がらないようにしています。

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自分たちで手順を考え、
協力して、かなり手際よく進めることができました。

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(最後の一枚)

パネルとキャプションを合せると全部で25枚。
この量を、最後までやりきってくれました。


2人に感想を聞いてみました(抜粋)。

「一番よかったことが、日本刀や火縄銃をもてたことです。(中略)
一番きつかったのが、展示作業や2日目の寄託資料調査・写真撮影作業です。
展示作業でメジャーで長さをはかったりするのが
難しかったけど楽しかったです。(中略)
収蔵庫などは、めったに見れないのでとてもよかったです。」

「特に楽しかったのは、収蔵庫の整理です。(中略)
3日目の午後の展示作業は、見ばえが良くなるように、
きちんと長さを全て均等にするのが大変でした。
職場体験を通して、博物館などに行った時、
普通に眺めていたポスター1つ1つが、
こんなに時間をかけて、ていねいに貼っていたと思うと、
仕事の大変さがよく分かりました。」

2人とも、3日間の体験から、たくさんのことを学んだようです。
また博物館に行ってみたい、とも言ってくれていました。

一生懸命仕事をしてくれたので、とっても疲れたと思います。
社会に出ても活躍されるだろうなあと思うお二人でした。
3日間ありがとうございました。

また、いつでも、博物館に遊びに来てくださいね。


(学芸員 袴田舞)

企画展「紀伊徳川家の家臣たちⅡ」が始まりました

10日(土)から、企画展「紀伊徳川家の家臣たちⅡ」が始まりました。
会場はこんな感じです。

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11日(日)のミュージアムトークでは、15人の参加がありました。
この企画展では、紀伊徳川家ゆかりの資料や所在が明らかになった紀伊徳川家に仕えた家臣の家に伝来した資料から、紀伊徳川家や家臣たちの実像に迫ります。
また、近年行われている和歌山城三の丸の発掘調査や岡公園へ移築された紀伊藩士旧大村家住宅長屋門(和歌山市指定文化財)に関連した資料も展示しています。

会期は7月17日(月・祝)までです。
ミュージアムトーク 6月17日(土)、25日(日)、7月9日(日)、15日(土)に行います。 いずれも午後1時30分から。
7月15日(土)の午後3時からは、現地見学会(旧大村家住宅長屋門)を行います。

(主任学芸員 前田正明)

「和歌山県の核となる新時代の博物館づくり事業」報告

【事業名称】
「和歌山県の核となる新時代の博物館づくり事業」
(平成28年度文化庁「地域の核となる美術館・歴史博物館支援事業」採択)

【事業主体】
 和歌山県立博物館施設活性化事業実行委員会(委員長:伊東史朗)
 事業協力:歴史資料保全ネット・和歌山(実行委員会構成団体)、和歌山県立博物館友の会(実行委員会構成団体)、和歌山県博物館施設等災害対策連絡会議、和歌山県立和歌山工業高等学校、和歌山県立和歌山盲学校ほか

【事業目的】
 本事業では、新時代の博物館における機能のあり方を実践的に検討することで、地域における高度な課題に対応する地域の核となる博物館づくりを進めました。
 「携帯端末を用いた展示解説システム開発事業」では既存の館保有データと汎用的なアプリケーションを活用した、簡便に情報の更新や追加を行える展示解説システムの開発を行うことができました。
 「地域に眠る「災害の記憶」と文化遺産を発掘・共有・継承する事業」では、過去の「災害の記憶」を地域全体で共有し、継承していくことで、将来起こりうるであろう東南海・南海地震に対し、地域住民が自らの生命と財産を守っていく活動を支援する取り組みを行いました。調査対象地域において15回の調査を行い、調査報告書の作成、画像データの収集を行って、災害時に被災した文化財を保全する活動がより円滑に進められるようになったといえます。調査対象地域の住民に対しては、小冊子『先人たちが残してくれた「災害の記憶」を未来に伝えるⅢ』を配布し、現地学習会「歴史から学ぶ防災2016 -命と文化遺産を守る-」を開催し、情報の共有化を図ることができました。
 「さわれる資料による文化財の保存・活用と博物館のユニバーサルデザイン化事業」では、視覚に障害のある人の博物館利用促進のため、和歌山県立和歌山工業高等学校・和歌山県立和歌山盲学校と連携し、さわれるレプリカとさわって読む図録を作製し、誰もがレプリカや図録を通して楽しく学べる博物館のユニバーサルデザイン化を進めました。また過疎地域所在の文化財の盗難・減災害対策としてる重要資料を県立博物館で保管するとともに、そのレプリカを作成して所蔵者へ提供し、伝来地域の環境変化を最小限に留めながら文化財を保存する方法を構築しました。どちらも実際的な効果の期待される先進的な取り組みであり、広報効果も高かったといえます。
 このように本事業で行った3つの事業については、博物館内においては利用者のユーザビリティーを高め、かつ視覚障害者の利用促進を図ることができ、博物館外においては博物館がハブとなって地域・人・諸機関をつなげる先進的な資料保全のあり方を構築することができたものと考えています。

【事業内容と実績報告】
1、携帯端末を用いた展示解説システム開発事業
 本事業においては、和歌山県立博物館において現在展示している常設展「きのくにの歩み−人びとの生活と文化−」の構成をもとに携帯端末により展示鑑賞のサポートを行う鑑賞支援ツールを制作しました。テキスト・画像・音声のデータは、これまで和歌山県立博物館が行ってきた活動の中で蓄積されたものを利用し、データ入力・更新作業は、館職員が行うもので、館内に整備済みのWi-Fi環境を活用しています。
 効果としては、既存の館保有データ(テキスト・画像・音声)を活用し、また汎用的なアプリケーションを活用することによって、比較的簡便に展示解説システムを開発することができたこと、利用者にとっては個人の携帯端末で展示コーナーごとに、任意の解説情報(テキスト・画像・音声)を引き出すことができ、また携帯端末を持たない利用者には、展示室据付タブレットや貸出用タブレットにより、活用することができるようにしたことを挙げられます。データ管理用のサーバでは、館職員が任意で情報データの加除をできるようにしているため、昨年度に整備した外国語(英語・中国語・韓国語)のデータを加えることも可能です。今後、来館者の利用状況・反応を見ながら、利用促進の手法を検討することが必要と考えています。
展示解説システム1 - コピー操作用端末
展示解説システム2 - コピー常設展示室設置状況

2、地域に眠る「災害の記憶」と文化遺産を発掘・共有・継承する事業
 歴史資料保全ネット・わかやま(民間ボランティア組織)、和歌山県内の博物館施設等で構成される和歌山県博物館施設等災害対策連絡会議、東南海・南海地震に伴う津波被害が想定される市町村の防災担当部局・教育委員会、自主防災組織などと連携し、過去の「災害の記憶」を地域全体で共有し、継承していくことで、将来起こりうるであろう東南海・南海地震に対し、地域住民が自らの生命と財産を守っていく活動を支援する取り組みを行いました。同時に被災という事態を想定し、被災した文化財を保全する活動の前提となる被害想定地域の文化財の所在確認調査を行いました。また、かつて被害想定地域に所在し、現在神奈川大学日本常民文化研究所所蔵となった資料が存在していることから、それらの資料の所在確認を行い、写真撮影を行いました。なお調査対象地域は印南町・由良町でした。
 調査対象地域において15回の調査を行い、調査報告書の作成(県立博物館・文化遺産課・県立文書館と地元教育委員会で情報共有)と画像データの収集(県立博物館・文化遺産課・県立文書館で共有)を行いました。これによって、災害時に被災した文化財を保全する活動がより円滑に進められるようになっています。調査対象地域の住民に対しては、小冊子『先人たちが残してくれた「災害の記憶」を未来に伝えるⅢ』(平成29年1月17日発行、1万冊)と現地学習会「歴史から学ぶ防災2016 -命と文化遺産を守る-」のチラシ(1万2千枚)を、関係自治体の協力を得て、調査対象地域の全戸と県内の関係機関に配布しました(小冊子については和歌山県博ホームページからもダウンロード可能)。また印南町と由良町で、「災害の記憶」の発掘と文化遺産の所在確認調査で明らかになった内容を住民に伝える現地学習会を実施しました(印南町は平成29年2月25日参加者75人、由良町は同年2月26日参加者94人)。参加者を対象に行ったアンケート調査から、発掘した「災害の記憶」について、詳しく知らない参加者が印南町で7~8割以上、由良町では9割以上いることが明らかになり、今回の事業に大きな効果があったことが確認できました。また、かつて被害想定地域に所在し、現在神奈川大学日本常民文化研究所(横浜市)の所蔵となっている資料が存在していることから、常民研での所在確認調査も実施し、目録作成と写真撮影を行いました。
20160830現地調査(印南町、西岸寺谷)DSCN1761現地調査(印南町・西岸寺谷)2016年8月30日
20161007現地資料調査(印南町、印定寺)PA070596現地調査(印南町・印定寺)2016年10月7日
20161121検討会議(和歌山県博)DSCN3445検討会議(於和歌山県博)2016年11月21日
20161203現地資料調査(由良町、衣奈八幡神社)DSCN2345現地資料調査(由良町・衣奈八幡神社)2016年12月3日
20170115現地聞き取り調査(由良町、由良町役場)DSCN3157現地聞き取り調査(由良町役場)2017年1月15日
20170125現地聞き取り調査(由良町、由良町公民館)IMG_3710現地聞き取り調査(印南町公民館)2017年1月25日
20170225現地学習会(印南町、報告)IMG_4367現地学習会(印南町・報告)2017年2月25日
20170225現地学習会(印南町、ワークショップ)IMG_4460現地学習会(印南町・ワークショップ)2017年2月25日
20170226現地学習会(由良町、報告)IMG_4629現地学習会(由良町・報告)2017年2月26日
20170226現地学習会(由良町、ワークショップ)IMG_4686現地学習会(由良町・ワークショップ)2017年2月26日
20170313~0317常民研調査(横浜市)P3172721神奈川大学日本常民文化研究所所蔵資料調査1 2017年3月13日~17日
20170313~0317常民研調査(横浜市)P3172728神奈川大学日本常民文化研究所所蔵資料調査2 2017年3月13日~17日

3、さわれる資料による文化財の保存・活用と博物館のユニバーサルデザイン化事業
 本事業では、視覚に障害のある人の博物館利用促進のため、和歌山県立和歌山工業高等学校・和歌山県立和歌山盲学校と連携し、さわれるレプリカとさわって読む図録を作製し、誰もがレプリカや図録を通して楽しく学べる博物館のユニバーサルデザイン化を進めました。また和歌山県内所在の文化財のうち、盗難や災害等で被害を受ける可能性のある重要資料を県立博物館で保管するとともに、そのレプリカを作成して所蔵者へ提供し、伝来地域の環境変化を最小限に留めながら文化財を保存する方法を構築しました。
 平成28年度は県立和歌山工業高等学校との連携により、紀の川市横谷区茶所所蔵仏頭、高野町花坂観音堂所蔵阿弥陀如来坐像の文化財レプリカを作製(着色は和歌山大学学生が担当)、それぞれ実物は博物館で保管して、現地にレプリカを安置しました。盗難や災害の被害から文化財を守りながら、信仰環境の変化を少なくする取り組みで、被提供者からは「末永く大切にしたい」等の意見があり、顕著な防犯、防災効果がありました。またこの2つの作品を含む7体の仏像を素材として、県立和歌山盲学校との連携でさわって読む図録『さわって学ぶ 仏像の基礎知識』を作製しました。難解になりがちな内容を平易化し、視覚障害者の郷土学習、美術学習の教材とした。近畿盲学校、主要点字図書館ほかでの活用を図る。全盲の利用者から「仏像のかたちの違いが分かった」などといった意見があり、さわれる絵による学習効果が確かめられた。またこの図録に掲載したものと同じさわれる文化財レプリカ7体を展示するロビー展「さわって学ぶ 仏像の基礎知識」(平成29年3月28日~6月4日)も開催、会期後も常時展示公開を予定しています。資料の形を直接体感することで視覚障害者が情報にアクセスする手段として高い効果があり、かつ誰もが公平かつ柔軟に楽しめ、破損による影響も少なく、博物館展示のユニバーサルデザイン化を促進させる効果がありました。
PB040076 - コピーレプリカ作製のようす
花坂観音堂阿弥陀如来坐像(左実物・右レプリカ) - コピー作製した花坂観音堂の阿弥陀如来坐像レプリカ(左:実物、右:レプリカ)
P2070231 - コピー文化財レプリカの現地奉納〔防犯対策)2017年2月7日
DSC_0399 - コピーさわって読む図録『さわって学ぶ 仏像の基礎知識』
DSC_0397 - コピーロビー展「さわって学ぶ 仏像の基礎知識」のようす

ロビー展「さわって学ぶ 仏像の基礎知識」(平成29年3月28日~6月4日)

ロビー展 さわって学ぶ 仏像の基礎知識
(平成29年3月28日~6月4日)

 和歌山県立博物館では、視覚に障害のある方に対して施設利用の促進と情報の共有化を図るため、平成22年(2010)から、和歌山県立和歌山工業高等学校との連携による3Dプリンターを活用したさわれる文化財レプリカ作りと、和歌山県立和歌山盲学校との連携による特殊な透明盛り上げ印刷によるさわって読む図録作りを、継続して行っています。
 平成27年度には、新たにさわれる文化財レプリカを2点(紀の川市・横谷区茶所所蔵の仏頭、高野町・花坂観音堂所蔵の阿弥陀如来坐像)と、さわって読む図録『さわって学ぶ 仏像の基礎知識』を作成いたしました。今回のロビー展では、このさわって読む図録の内容に基づき、先の2点を含む7体の仏像のさわれるレプリカを展示して、魅力あふれる和歌山県の仏像を身近に感じていただくための基礎知識をご紹介します。
 またあわせて、これら文化財レプリカを「お身代わり」仏像として活用した、和歌山県内における文化財防犯の取り組みについてもご紹介します。
※展示資料:紀の川市薬師寺薬師如来坐像、海南市海雲寺釈迦如来坐像、紀の川市林ヶ峯観音寺菩薩形坐像、田辺市滝尻王子宮十郷神社滝尻金剛童子立像、紀の川市円福寺愛染明王立像、高野町花坂観音堂阿弥陀如来坐像、紀の川市横谷区茶所仏頭の、それぞれさわれる文化財レプリカ。
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さわって読む図録『さわって学ぶ 仏像の基礎知識』表紙
花坂観音堂阿弥陀如来坐像(左実物・右レプリカ)
花坂観音堂の阿弥陀如来坐像(左:実物/右:複製) 平成28年度製作
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和歌山県立和歌山工業高等学校でのレプリカ製作のようす(3次元デジタイザによるデータ計測)

◎さわって読む図録『さわって学ぶ 仏像の基礎知識』は、県立和歌山盲学校のほか、和歌山点字図書館をはじめとする県内すべての公共図書館に寄贈し、活用を図ります。
◎和歌山県立博物館におけるさわれる文化財レプリカとさわって読む図録制作の取り組みについては、内閣府平成26年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰において、博物館展示の ユニバーサルデザイン化を推進するものとして、内閣総理大臣表彰を受賞しています。

主  催 和歌山県立博物館
製作協力 和歌山県立和歌山工業高等学校・和歌山県立和歌山盲学校
会  期 平成29年(2017) 3月28日(火)~6月4日(日) 
会  場 和歌山県立博物館エントランスホール
開館時間 午前9時30分~午後5時
休 館 日 毎週月曜日
利 用 料 ロビー展は無料 (常設展・企画展・特別展の観覧に際しては入館料が必要ですが、ただし、高校生以下・65歳以上・障害者の方は無料)。


熊野水軍のさとシンポジウム「列島の中の熊野水軍」が開催されました

3月11日(土) 和歌山県立近代美術館2階ホールにて、
白浜町教育委員会主催による熊野水軍のさとシンポジウム「列島の中の熊野水軍」が開催されました。
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まず最初に、安宅荘中世城郭発掘調査委員会の
副委員長である高橋修さん(茨城大学文学部教授)から、
開会挨拶と趣旨説明をしていただきました。
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次に記念講演として、東京大学史料編纂所の黒嶋敏さんに
「「熊野水軍からみた中世後期の『列島再編』」と題してお話いただきました。
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 黒嶋さんの近著『海の武士団-水軍と海賊のあいだ-』で取り上げられた「海の勢力」論にはじまり、
内乱の時代である室町・戦国期に熊野水軍の組織的な水軍活動がみられなくなるのはなぜか、
といった課題を、紀伊半島を海の道として捉えて考えてみる、という趣旨でお話いただきました。
「明徳記」などを素材に、室町幕府の成立が紀伊半島の流通に与えた影響について、
東国との関係など潮岬ルートの断絶(紀伊半島の東西化)の問題に触れてていただきました。
中世の日本列島全体の流通構造のなかでの熊野(紀伊半島)の位置を知ることができる、
非常に興味深い内容のご講演だったように思います。


その後、安宅荘中世城郭発掘調査委員会の委員による3本の基調報告を行いました。
基調報告①として、和歌山市文化スポーツ振興財団の北野隆亮さんに、
「備前焼からみた安宅荘中世城館群-要害山城跡出土資料を中心に-」
と題して報告いただきました。
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 岡山県伊部に生産地がある備前焼について、
和歌山県内遺跡の出土事例から備前焼の流通状況を概観。
要害山城跡の遺物や長寿寺大甕などを素材に、日置川流域が備前焼流通の商圏拡大の場であり、
なおかつ流通拠点であったことを紹介され、
日置川流域と瀬戸内海との関係について触れてただきました。

基調報告②として、当館学芸員坂本が、
「熊野水軍の古文書-小山家文書の世界-」と題して報告しました。
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 企画展「躍動する紀南武士-安宅氏と小山氏-」の紹介を中心に、
山間部(日置川中流域)に拠点を有する小山氏が残した小山家文書の魅力と可能性を紹介しました。
特に、日置川中流の三箇荘に拠点をもちながらも、紀伊水道をまたにかけ、
山林資源の管理をする紀南の水軍領主のあり方について触れました。

基調報告③として、白浜町教育委員会佐藤純一さんに、
「安宅荘中世城館群の現在-これからの保全と活用-」と題して報告いただきました。
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 中世安宅荘城郭群のこれまでの調査(発掘調査・遺構確認調査)と
その成果の概要を紹介していただき、今後の保全と活用について、
民泊事業との関連などの様々な取り組みについても触れていただきました。


最後に、和歌山城郭調査研究会の白石博則さんをコーディネーターとして
黒嶋さんと基調報告の3名でパネルディスカッションを行いました。
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 会場からの質問も受けつつ、熊野の水軍領主としての特徴は何か?
といったテーマなどを討論しました。
水軍領主は複数の拠点をもち移動しつつ活動するのが基本的な姿であるとのご意見もあり、
日置川流域に拠点をもつ安宅氏や小山氏などは、
山「も」(海も)活動の舞台とするとするところに大きな特徴があることなどが改めて確認されました。
また中世安宅荘城郭群も、
山林の資源と海との両方をおさえる場所に拠点を築いていることが重要であり、
他の水軍領主にはない大きな特徴なのではないか(ほかに類例は見当たらない)、
というご意見もいただきました。

日本列島(をめぐる流通構造)のなかで、熊野水軍はどのような位置にあったのか、
熊野の水軍領主はどのような性格をもっていたのか、
ほかの水軍領主との比較のうえでも、見えてきたように思います。

最後に、白浜町教育委員会の鈴木勇教育長による閉会の挨拶で、終了しました。
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非常に多くのかたに来ていただきました。ありがとうございました。

(学芸員 坂本亮太)

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