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企画展「和歌山の文化財を守る―仏像盗難防止対策と近年の文化財修理―」について

企画展 和歌山の文化財を守る
―仏像盗難防止対策と近年の文化財修理―

会期:平成30年(2018)9月1日(土)~10月4日(木)

 全国で仏像など文化財が盗まれる事件が多発しています。和歌山県では、平成22年(2010)~23年春にかけての1年間で、約60か所のお寺やお堂から仏像172体などの文化財が盗まれるという、過去に例のない連続文化財盗難被害が発生しています。また昨年から今年にかけても、岩出市、紀の川市、和歌山市で60体を超える仏像が盗まれており、非常事態ともいうべき状況となっています。
 長い間信仰され守られてきた「仏さま」が盗まれる大きな要因は、地域住民の高齢化や人口減少によってお堂や祠の日常的な管理が困難になる中、そうした隙を換金目的の窃盗犯に狙われていることにあります。今もなお、文化財が盗難被害を受ける危険性は高いままであり、人びとの信仰の蓄積と地域の歴史をものがたる大切な文化財を失わないために、ただちに対策を行う必要があります。
 この企画展では新たな被害を防ぐためのアピールとして、実際に盗難被害にあって取り戻された文化財を展示して、身近な寺社や祠堂の防犯対策について紹介するとともに、和歌山県立和歌山工業高等学校・和歌山大学と連携して製作している3Dプリンター製お身代わり仏像を活用した特徴的な防犯対策の事例を紹介します。
 あわせて、近年修理を行って、保存に適した良好な状態を取り戻した文化財(絵画・彫刻・工芸品)を展示し、和歌山県の文化財を未来へ継承していくための取り組みをご紹介します。

■主  催  和歌山県立博物館
■会  期  平成30年9月1日(土)~10月4日(木)
■会  場  和歌山県立博物館(和歌山市吹上1-4-14)  企画展示室
■開館時間 午前9時30分~午後5時 (入館は4時30分まで)
■休 館 日  毎週月曜日(ただし9月17日(月・祝)、9月24日(月・祝)は開館し、9月18日(火)、9月25日(火)は休館)
■入 館 料  一般280円(220円)・大学生170円(140円) ※( )内は20名以上の団体料金
        ※高校生以下、高齢者(65歳以上)、障害者、県内に在学中の外国人留学生は無料
■ミュージアムトーク(学芸員による展示解説、各回13:30~14:30)
         9月1日(土)、9月16日(日)、9月30日(日) 

出陳資料一覧
①仏像盗難被害多発中!―取り戻された仏像―
1 十一面観音立像 平安時代 紀の川市・西山観音堂蔵(地蔵寺管理) 紀の川市指定文化財
2 役行者坐像 室町~江戸時代 紀の川市・中津川行者堂蔵 
3 愛染明王坐像 江戸時代 紀の川市・円福寺蔵 
4 弘法大師坐像 江戸時代 紀の川市・円福寺蔵 

②所蔵者不明の盗難被害資料―見覚えありませんか?―
5 阿弥陀如来坐像 1軀 平安時代 和歌山県立博物館保管
6 阿弥陀如来坐像 1軀 室町~江戸時代 和歌山県立博物館保管
7 愛染明王坐像 1軀 江戸時代 和歌山県立博物館保管
8 弁才天坐像 1軀 江戸時代 延宝6年(1678) 和歌山県立博物館保管
9 天部形立像 1軀 江戸時代 和歌山県立博物館保管
10 弘法大師坐像 1軀 江戸時代 享保19年(1734) 和歌山県立博物館保管
11 弘法大師坐像 1軀 江戸時代 寛文5年(1665) 和歌山県立博物館保管
12 滝見観音台座 1基 江戸時代 和歌山県立博物館保管
13 香炉 1口 現代 昭和38年(1963) 和歌山県立博物館保管
14 如来形立像 1軀 江戸時代 和歌山県立博物館保管
15 阿弥陀如来立像 1軀 江戸時代 和歌山県立博物館保管
16 如来形立像 1軀 江戸時代 和歌山県立博物館保管
17 如来形坐像 1軀 江戸時代 和歌山県立博物館保管
18 菩薩形立像 1軀 江戸時代 和歌山県立博物館保管
19 千手観音立像 1軀 江戸時代 和歌山県立博物館保管
20 不動明王立像 1軀 江戸時代 和歌山県立博物館保管 
21 弘法大師坐像 1軀 江戸時代 和歌山県立博物館保管
22 弘法大師坐像 1軀 江戸時代 和歌山県立博物館保管
23 不動明王厨子・光背・台座 1基 現代 昭和60年(1985) 和歌山県立博物館保管
24 台座部品 1基 江戸時代 和歌山県立博物館保管
25 伏鉦 1口 江戸時代 和歌山県立博物館保管
26 木魚 1口 現代 和歌山県立博物館保管
27 小部品類 18点 江戸時代~現代 和歌山県立博物館保管  

③お身代わり仏像による防犯対策―高校生・大学生が製作した3Dプリンター製仏像―
28 菩薩形坐像 1軀 平安時代 紀の川市・林ヶ峰観音寺蔵 和歌山県指定文化財
29 滝尻金剛童子像 1軀 平安時代 田辺市・滝尻王子宮十郷神社蔵 田辺市指定文化財
30 女神坐像 3軀 鎌倉時代 かつらぎ町・三谷薬師堂蔵 和歌山県指定文化財
31 愛染明王立像 1軀 江戸時代 紀の川市・円福寺蔵
32 薬師如来坐像 1軀 平安時代 紀の川市・薬師寺蔵
33 釈迦如来坐像及び迦葉・阿難立像 3軀 南北朝時代 貞和3年(1347) 海南市・海雲寺蔵
34 仏頭 1点 平安時代 紀の川市・横谷区茶所蔵
35 阿弥陀如来坐像 1軀 平安時代 高野町・花坂観音堂蔵
36 観音菩薩立像 1軀 平安時代 有田川町・下湯川観音堂蔵
※3Dプリンター製の仏像(各原資料と併置) 13点 現代 和歌山県立博物館蔵

④近年の文化財修理の成果
37 十王図 10幅 元、あるいは南北朝時代 有田川町・浄教寺蔵 和歌山県指定文化財  
  ※2幅ずつ1週間ごとに展示替えします
38 刺繍阿弥陀三尊来迎図 1幅 江戸時代 有田川町・浄教寺蔵
39 刺繍如意輪観音像 1幀 江戸時代 貞享4年(1687) 和歌山県立博物館蔵
40 熊野観心十界曼荼羅 1幅 江戸時代 有田川町・牛蓮寺蔵 江戸時代
41 熊野観心十界曼荼羅 1幅 江戸~明治時代 上富田町・観音寺蔵 
42 剣 銘富田宗兵衛安定造之 1口 江戸時代 寛永21年(1644) 紀の川市・熊野神社蔵 
43 風神像(二十八部衆のうち) 1軀 江戸時代 紀の川市・粉河寺蔵

第46回マイミュージアムギャラリー「一筆にかける ―蘭亭序に臨む―」

和歌山県立博物館マイミュージアムギャラリー
第46回展示 「一筆にかける ―蘭亭序に臨む―」
【出 陳 者】 蓬莱 夏野
【展示期間】 平成30年8月11日(土)~9月9日(日)
【出陳資料】 蘭亭序臨書  現代(21世紀)

【資料をめぐる思い出】
 「この掛け軸は、王羲之(おうぎし)の蘭亭序(らんていじょ)を臨書したもので、第21回国際高校生選抜書展に入選しました。高校1年生の秋に大きな作品に初挑戦し、自分の字の癖を消して手本の書に寄せることに苦労しました。大阪市立美術館の展示会では多くの優秀な作品を目にし気後れしましたが、自分の作品を見つけたときは見劣りしていないことに安堵し感動しました。また、書道経験者の母と妹にも喜んでもらい誇らしく思いました。
 私は、小学3年生から書道を続けています。大好きな書道の魅力を、より多くの人に伝えるための活動にも力を入れています。一筆にかける思いを感じてみませんか。」
蘭亭序臨書
(画像クリックで拡大します)

【学芸員(実習生)の一口メモ】
 永和9年(353)に王羲之(おうぎし)が蘭亭にて曲水の宴を催したときに成った詩集の序文です。宴では、せせらぎに浮かべた杯が自分の前に流れ着くまでに詩を詠み、詩ができなければ大きな杯でお酒を飲みました。
 唐の太宗皇帝が蘭亭序を大変気に入り、精密に写した複製を作らせ、本物は墓に副葬させました。そのため、実物は現存しませんが、複製されたものは多数の中国の書家が臨書しています。その一つが下の写真で、唐代の書家、欧陽詢(おうようじゅん)の手になるものです。
 同じ文字でも擦れ具合や形など書き分けられている部分が多く見られます。本作品でも模しているのでぜひ見つけてください。
東博蘭亭序部分
(画像クリックで拡大します)
王羲之 蘭亭序(呉丙本)部分 東京国立博物館蔵

※今回の展示は、平成30年度に和歌山県立博物館が受け入れた博物館実習生5名が作成しました。

8/12(日)「博物館実習生によるミュージアムトーク」開催します!

暑い日が続いています。
さて、来週から、平成30年度博物館実習が始まります。
実習最終日には、
博物館実習生による、夏休み企画展の展示解説を行います。

◆ 「博物館実習生によるミュージアムトーク」
8月12日(日) 14:30~
(通常のミュージアムトーク終了後に行います)

5人の実習生が、それぞれの言葉で展示を解説してくれます。
きっと、新鮮で楽しい時間になると思います。

同じ日の10:00~12:00には、
◆「ホンモノの文化財にさわってみよう!」
というイベントも行います。
年に一度だけ、実際に文化財に触れることができる、
例年人気のイベントです。

どれも、夏休みの素敵な思い出になることと思います。
みなさま、ふるってご参加ください。

夏休み企画展「城下町和歌山を歩こう」は、現在好評開催中です。
詳しくは、次のリンクをご覧下さい。
https://www.hakubutu.wakayama-c.ed.jp/joukamati_aruku/frameset.htm

みなさまのご来館をお待ちしております。

(学芸員 袴田舞)

「博物館でいきものめぐり」今週末まで開催中!

開催中の企画展「博物館でいきものめぐり」。おかげさまで好評です。

大人気の、長沢芦雪が描いたイタチや牛、可愛い犬がお出迎えします。
その他、江戸絵画ファンもびっくり、紀州のレアな画家の絵も勢揃いです。

詳細はこちらをご覧下さい↓↓
https://www.hakubutu.wakayama-c.ed.jp/ikimonomeguri/frameset.htm

展示は今週末、7月8日(日)まで。
楽しい動物たちをお見逃しなく!

(学芸員 袴田)

特別展「やきもの新時代」今日17:00で終了です。

本当に早いもので、
特別展「紀伊徳川家 やきもの新時代」最後のイベントが終わりました。

本日のミュージアムトークには、会期中最高の、46人の方がご参加くださいました!

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(クリックで拡大します ※以下同じ)
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たくさんの方にお越しいただき、会期終了を迎えられるのも、
ご協力、ご来場いただいた皆さまのおかげです。
本当にありがとうございました。

春の特別展は今日で終わり、なんとも寂しいですが、
6月9日(土)からは、企画展「博物館でいきものめぐり」が始まります。
特別展では江戸時代から明治時代のやきものをご覧いただきましたが、
次の企画展では、同じ時代の絵画をご覧いただけます。
生きものがいっぱいで楽しい展覧会ですので、ぜひ、お楽しみに。

本日も、16:30まで入館可能です。
駆け込み大歓迎ですので、お近くを歩いていらっしゃるみなさま(!)、
ぜひ、博物館にお立ち寄りいただき、最終日の特別展をご覧ください!

(学芸員 袴田舞)

会期残り3日!特別展「やきもの新時代」

和歌山県立博物館、春の特別展「紀伊徳川家 やきもの新時代」も、会期終盤。
なんと、残すところ、あと3日となってしまいました……。
あっという間です。

今日は、会期中に開催されたイベントのご報告をしたいと思います。

◆4月28日(土)
2回目のミュージアムトーク。

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(クリックで拡大します。以下同様)

1回目のトークより少し多く、19名の方々がご参加くださいました。


◆5月4日(金)
3回目のミュージアムトーク。

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2回目のトークよりもさらに多く!35名の方々がご参加くださいました。


◆5月13日(日)
《国際博物館の日記念事業》として、講演会を開催。
梶山博史(かじやま・ひろふみ)氏(中之島香雪美術館学芸課長)にご講演いただきました。
「百花繚乱・紀州のやきもの―その魅力とルーツ」という題で、
藩窯・御用窯・御庭焼などの定義から丁寧にお話しいただき、
紀州のやきものが中国陶磁から受けた影響や、
土型の移動などについても、詳細に明らかにしてくださいました。
やきものへの愛と熱意が伝わってきて、感動です。

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なかでもエキサイティングだったのは、海を渡った紀州のやきもののお話。
アメリカやイギリス、フランスのミュージアムに、
たくさんの偕楽園焼(明治に輸出用として作られたという模倣品を含む?)や南紀男山焼の作品が
収蔵されていて、当地でのやきもののデザインにも影響を与えた可能性があるとのこと。
とても興味深く拝聴しました。

ご来場の皆さまにもお詳しい方が多く、質疑応答も盛り上がりました。
大変意義深い講演会となったのではないかと思います。
梶山先生、ありがとうございました。


◆5月20日(日)
「紀州のやきもの―御庭焼を中心に」というタイトルで20日に予定していた、
中村貞史(なかむら・ただし)氏の講演会。
中村先生は、元・和歌山県立紀伊風土記の丘館長で、
実は、和歌山県立博物館でもお勤めだった、私たち職員にとっての大先輩でもあります。

今回の特別展は、中村先生が2017年に上梓された、
『紀州陶磁器史研究』というご著書に導かれるところが非常に多く、
展覧会の事前調査でも、ずいぶんお世話になりました。

講演会前後に体調を崩され、その日は私が代理でスライドレクチャーをさせていただきました。
あたたかく受け入れてくださったご来場の皆さま、本当にありがとうございました。

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中村先生は、きっとまた博物館で、誰よりも詳しく、楽しいお話をお聞かせくださるはずと思っております。
会期中には、残念ながら中村先生のお話を伺えませんが、またの機会を願って!
ぜひ、『紀州陶磁器史研究』(清文堂)もご覧下さい!


◆5月27日(日)
「やきものアイディアブック―南紀男山焼No.1陶工・光川亭仙馬の下絵帖を覗く」と題し、
博物館講座を開催いたしました。

南紀男山焼の代表格であった、光川亭仙馬(こうせんてい【ひかるがわてい】・せんば)は、
陶磁器への絵付けを得意とした陶工です。
仙馬が絵の練習をしたり、アイディアを書き留めたりしたスケッチブックが残っており、
博物館講座ではその魅力的な内容を紹介しました。

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江戸時代に流通していた版本の絵を写したり、
仏像やコイン、中国のやきものを写したり。
紀州の実際の風景を描いたものもありました。
反古紙に所狭しと絵を描いていて、
仙馬がいかに熱心に制作に向き合っていたかが伝わってくるようです。

展示中の仙馬の下絵帖はこちら。

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6月3日(日)までご覧いただけます!


以上、これまでのイベントのご報告でした。

会期中のイベントも、残すは、最終日6月3日(日)のミュージアムトークのみ。
開始時刻は13:30です。

お近くの皆さまもご遠方の皆さまも、どうぞふるってご参加ください!


(学芸員 袴田舞)











5月20日の特別展関連イベントの内容変更について(講師急病のため)

5月20日(日)に予定しておりました講演会「紀州のやきもの―御庭焼を中心に―」につきまして、講師の中村貞史氏の急病により、下記内容に変更して開催いたします。
お楽しみにしていただいておりました皆様には、心よりお詫び申し上げます。

スライドレクチャー「紀伊徳川家 やきもの新時代」 
担当:袴田舞(当館学芸員)
日時:平成30年5月20日(日) 13:30~15:00
会場:和歌山県立近代美術館〔博物館隣〕2階ホール
※申込不要・参加無料 

「地域とともに文化遺産の継承を担う新たな博物館づくり事業」報告

【事業名称】
「地域とともに文化遺産の継承を担う新たな博物館づくり事業」
(平成29年度文化庁「地域の核となる美術館・歴史博物館支援事業」採択)

【事業主体】
 和歌山県立博物館施設活性化事業実行委員会(委員長:伊東史朗)
 事業協力:歴史資料保全ネット・和歌山(実行委員会構成団体)、和歌山県立博物館友の会(実行委員会構成団体)、和歌山県博物館施設等災害対策連絡会議、和歌山県立和歌山工業高等学校、和歌山県立和歌山盲学校ほか

【事業目的】
 本事業では、地域に伝わる文化遺産の価値や意味の顕在化・共有化と、その継承方法の新たなあり方について、多くの研究者、自治体、地域住民、学校などと連携しながら和歌山県立博物館が中心となって取り組みを行いました。
 「地域に眠る「災害の記憶」と文化遺産を発掘・共有・継承する事業」では、新宮市・北山村を中心に調査を行い、災害時に被災した文化財を保全する活動がより円滑に進められるようになりました。調査成果は調査対象地域の住民に対して小冊子『先人たちが残してくれた「災害の記憶」を未来に伝えるⅣ』(2万1千冊)を配布し、現地学習会「歴史から学ぶ防災2017-命と文化遺産とを守る-」を2度開催して「災害の記憶」についての認識を深めるとともに、被災した文化遺産に対して適切な対応ができる専門的知識や技術を習得するための公開研修会を実施しました。また把握した資料は和歌山県立博物館企画展「ふるさとからのおくりもの」(平成30年1月27日~3月4日)でも展示公開しました。地域住民の生命や生活に直結する重要な文化遺産を掘り起こし、共有化するための確かな実践方法を提示することができたと考えています。
 「複製資料による文化財の保存・活用と博物館のユニバーサルデザイン化事業」では、和歌山県内所在の文化財のうち、盗難や自然災害等で被害を受ける可能性のある重要資料として、有田川町下湯川観音堂観音菩薩立像、すさみ町持宝寺阿弥陀三尊像のお身代わり仏像を3Dプリンターにより作成して提供し、地域の信仰環境の変化を最小限に留めながら文化財を保存する方法を構築しました。最新技術を用いながら、生徒・学生と地域住民を文化遺産を継承するものであり、新聞やテレビでも広く取り上げられました。また視覚に障害のある方々の博物館利用促進のため、県立和歌山工業高等学校・県立和歌山盲学校と連携し、先の3Dプリンター製仏像をさわれるレプリカとして活用出来るようににするとともに、通常印刷と特殊印刷による点字・線図を重ねたさわって読む図録『道成寺縁起-絵巻でたどる物語-』を作製し、あらゆる人々が楽しく郷土の歴史を学ぶことができる博物館のユニバーサルデザイン化を進めました。さわって読む図録は、和歌山県立博物館企画展「きのくに縁起絵巻の世界」(平成30年3月10日~4月15日)においても活用しました。
 2つの事業は、人口減少・高齢化社会における文化財の継承と、多発する自然災害への備え、そして障害者の日常生活や社会生活の支援という、日本社会が直面する重要な課題に対して、歴史博物館の機能を活かしつつ、実際的な効果を発揮した先進的な取り組みであり、全国の博物館施設における事業のモデルケースとなったものと考えています。

【事業内容と実績報告】
1、地域に眠る「災害の記憶」と文化遺産を発掘・共有・継承する事業
 歴史資料保全ネット・わかやま(民間ボランティア組織)、和歌山県内の博物館施設等で構成される和歌山県博物館施設等災害対策連絡会議、東南海・南海地震に伴う津波被害が想定される市町村の防災担当部局・教育委員会、自主防災組織などと連携し、過去の「災害の記憶」を地域全体で共有し、継承していくことで、将来起こりうるであろう東南海・南海地震に対し、地域住民が自らの生命と財産を守っていく活動を支援する取り組みを行いました。同時に被災という事態を想定し、被災した文化財を保全する活動の前提となる被害想定地域の文化財の所在確認調査を行いました。また、かつて被害想定地域に所在し、現在神奈川大学日本常民文化研究所所蔵となった資料の所在確認を行いました。調査対象地域については新宮市・北山村を設定し、必要に応じて、昨年度までの調査対象地域についても補足調査を行っています。
 実際の調査は、調査対象地域を中心に18回行い、調査報告書の作成(県立博物館・文化遺産課・県立文書館と地元教育委員会で情報共有)と画像データの収集(県立博物館・文化遺産課・県立文書館で共有)を行いました。これによって、災害時に被災した文化財を保全する活動がより円滑に進められるようになっています。調査対象地域の住民に対しては、小冊子『先人たちが残してくれた「災害の記憶」を未来に伝えるⅣ』(平成30年1月17日発行、2万1千冊)と現地学習会「歴史から学ぶ防災2017 -命と文化遺産とを守る-」のチラシ(2万枚)を、関係自治体の協力を得て、調査対象地域の全戸と県内の関係機関に配布しました(小冊子については和歌山県博ホームページからもダウンロード可能)。
 新宮市と北山村では、「災害の記憶」の発掘と文化遺産の所在確認調査で明らかになった内容を住民に伝える現地学習会を実施しました(新宮市は平成30年2月24日参加者64人、北山村は同年2月25日参加者50人。協力者・参加者には発表資料集を配布)。参加者を対象に行ったアンケート調査からは、発掘した「災害の記憶」について詳しく知らない参加者が新宮市で7割以上、北山村では9割以上いることが明らかになり、今回の事業に大きな効果があったことが確認できました。また、被災した文化遺産に対して、適切な対応ができる専門的知識や技術を習得するための公開研修会を新宮市と和歌山市で実施しました(新宮市は平成30年2月15日参加者20人、和歌山市は同年3月15日参加者58人)。本事業についての報道も多数ありましたが、それ以外に、和歌山県立博物館のホームページなどへの掲載も行ったほか、コラム(先人たちからのメッセージ 防災減災わかやま)という形で産経新聞に掲載し、調査成果を多くの県民に広められるように努めました(2か月に1回、計6回)。

2017年度文化庁1聞き取り調査(北山村・個人宅) 2017年7月1日
2017年度文化庁2資料調査(新宮市・宝泉寺) 2017年10月16日
2017年度文化庁3現地調査(北山村・大沼周辺) 2017年10月27日
2017年度文化庁4現地調査(新宮市・減災カフェ) 2017年12月16日
2017年度文化庁5コーナー展展示風景(1月27日~3月4日)
2017年度文化庁6現地学習会(新宮市・報告) 2018年2月24日
2017年度文化庁7現地学習会(北山村・ワークショップ) 2018年2月25日
2017年度文化庁8公開研修会(和歌山市・報告) 2018年3月14日

2、複製資料による文化財の保存・活用と博物館のユニバーサルデザイン化事業
 本事業では、和歌山県内所在の文化財のうち、盗難や自然災害等で被害を受ける可能性のある重要資料として、有田川町下湯川観音堂観音菩薩立像、すさみ町持宝寺阿弥陀三尊像をを県立博物館のレプリカを作成して所蔵者へ提供し、伝来地域の環境変化を最小限に留めながら文化財を保存する方法を構築しました。また視覚に障害のある人の博物館利用促進のため、和歌山県立和歌山工業高等学校・和歌山県立和歌山盲学校と連携し、さわれるレプリカとさわって読む図録を作製し、レプリカや図録を通して楽しく学べる博物館のユニバーサルデザイン化を進めました。
 今年度は、和歌山県立和歌山工業高等学校及び和歌山大学教育学部との連携により、有田川町下湯川の下湯川観音堂本尊の観音菩薩立像(平安時代後期)と、すさみ町周参見の持宝寺本尊の阿弥陀三尊像(南北朝時代)の文化財レプリカを作製し、それぞれ実物は博物館で保管して、現地にレプリカ(お身代わり仏像)を安置しました。盗難や災害の被害から文化財を守りながら、信仰環境の変化を少なくする取り組みで、被提供者からは「集落が高齢化して管理に不安を抱えていたので安心した」、「大切な仏像を、震災・津波から守ることができ安心だ」等の意見があり、顕著な防犯、防災効果があったと考えています。
 この2件(5体)の仏像については、和歌山県立博物館においてはさわれるレプリカとして活用し、視覚に障害のある方をはじめ、あらゆる人が触れられる資料として活用します。またさわって読む図録は『道成寺縁起-絵巻でたどる物語-』と題して作製しました。絵巻物によって示される物語のおもしろさを平易に伝える内容で、視覚障害者の郷土学習、美術学習の教材として使用できる内容となっています。和歌山県立博物館企画展「きのくに縁起絵巻の世界」(3/10~4/15)にて公開するとともに、広く活用を図るため、和歌山県立和歌山盲学校、県内公共図書館、近畿盲学校、主要点字図書館、全国博物館に提供しています。全盲の利用者から、「和歌山ゆかりの地域の伝承について初めて知ることができた」「絵やその構図の雰囲気、蛇が炎を吹きだしているようすなども感じられた」などの意見があり、さわれる絵による学習効果が確かめられました。
 これらの取り組みは、資料の形を直接体感することで視覚障害者が情報にアクセスする手段として高い効果があり、かつ誰もが公平かつ柔軟に楽しめ、破損による影響も少ないものであり、博物館展示のユニバーサルデザイン化を促進させる効果があったと考えています。
 事業内容については、新聞各紙(読売新聞2017年8月4日、12月18日、2018年2月9日、毎日新聞2018年3月5日ほか)のほか、テレビではNHK(和歌山)「あすのWA!」2017年12月20日、NHK(関西)「関西NEWS WEB」2017年12月26日、NHK(全国)「おはよう日本」2018年3月6日において報道され、広くお知らせすることができました。
2017年度文化庁9和歌山工業高等学校でのレプリカ制作のようす(3Dデジタイザーによる計測)
2017年度文化庁10和歌山大学教育学部美術専攻学生による着色作業
2017年度文化庁11有田川町・下湯川観音堂観音菩薩立像(左:実物 右:複製) 実物は平安時代後期(12世紀)
2017年度文化庁12有田川町・下湯川観音堂へのお身代わり仏像の奉納(2017年7月28日)
2017年度文化庁13すさみ町・持宝寺阿弥陀如来立像(左:実物 右:複製) 実物は南北朝時代(14世紀)
2017年度文化庁14すさみ町・持宝寺へのお身代わり仏像の奉納(2018年2月27日)
2017年度文化庁15さわって読む図録『道成寺縁起-絵巻でたどる物語-』

特別展「紀伊徳川家 やきもの新時代」オープンしました。

おかげさまで、2018年度春期特別展
「紀伊徳川家 やきもの新時代 ―富国と栄華の19世紀―」が、
昨日オープンしました。

オープン前夜看板
(クリックで拡大します)

江戸時代の終わりから明治時代のはじめにかけての約80年間は、紀州で最もやきもの生産が盛んだった時代です。
この特別展は、その頃の紀州の変化と、時代を反映したやきものの魅力を伝えようとする展覧会です。

第1章 御庭焼と藩主のサロン
第2章 陶工の招聘と陶磁器生産の黎明
第3章 三大窯の隆盛 ―偕楽園・瑞芝・南紀男山―
第4章 江戸時代の終焉と新時代の幕開け

詳しくは、特別展紹介ページ↓↓へどうぞ
http://www.hakubutu.wakayama-c.ed.jp/yakimono_sinjidai/frameset.htm


本日22日は、1回目のミュージアムトークを行いました。

ブログ使用 - コピー
(クリックで拡大します)

約10名の方々が参加してくださり、
楽しく質疑応答をしながらのトークとなりました。

午前・午後と、取材にもお越しいただきました。
明日か明後日、夕方のテレビで博物館を映していただけるようで、楽しみです。

次回のミュージアムトークは、4月28日(土)13:30~です。

ゴールデンウィークのお出かけに、ぜひ博物館へお越しください。


(学芸員 袴田)



1/24~26 和歌山工業高校インターンシップ


今年度最後の職場体験は、県立和歌山工業高等学校です。
生徒さん3人が、1月24日(水)~26日(金)の3日間、インターンシップに来てくれました。

【初日】
まずは、毎回恒例、朝礼での挨拶・自己紹介をしてもらい、
それから早速展示室のガラス拭き。
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そのあと、博物館の施設見学を行いました。

午後は、博物館で保管している写真フィルムの整理作業を行ってもらいました。
フィルムに指紋や傷を付けないように、白手袋やピンセットを使って、
丁寧に入れ替えていきます。
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フィルムケースに資料名が付いていないものは、
展覧会図録を見て一致する資料を見つけ、自分でケースに資料名を書きました。


【2日目】
今日もガラス拭きから始まります。
その後は昨日に引き続き、写真フィルムの整理です。
昨日付けた資料名を今度はパソコンで入力して、検索できるようにします。

午後は、収蔵庫の掃除をしました。
貴重な収蔵品に危険がないように気をつけながら、
広い部屋に隅々まで掃除機をかけるのは、けっこう疲れたようです。
特にこちらから指示しなくとも、
自然と手助けしあって、コードが引っかからないようにしていたのは、さすがです。
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それから、1月27日からの企画展「ふるさとからのおくりもの 新収蔵品展」
の展示作業を手伝いました。
パネルを取り付ける台を修理したり、章タイトルのパネルを打ち付けたりしました。


【3日目】
最終日の午前は、ガラス拭きの後、展示の仕上げのお手伝いです。
企画展示室に入って最初にお客様をお迎えする、
展覧会タイトルパネルをボードに打ち付けてもらいました。
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3人で手分けして、釘を打ったり、支えたり、見ばえを確認したりしながら、
手際よく完成させてくれました。
展示替えで出たキャプションなどの片付けも、素早く行ってくれました。

休憩後は、部屋に戻り、写真フィルム整理の仕上げです。
午後の時間も少し使って、残ったデータの入力、番号付け、配架をしました。
手が空いた人には、文献データの入力も手伝ってもらいました。
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膨大な量の写真に、「いつ終わるんだろう……」と不安になったことと思いますが、
素早く正確に終わらせてくれました。パソコンの扱いにも長けていて素晴らしい!

午後は、受付、ミュージアムショップ、監視、学習室の仕事を体験してもらいました。
お客様にコーヒーを出すなど、接客の体験もできました。



3日間のインターンシップは、緊張もあり、疲れたことと思います。
今回はなんと、中学生のときにも職場体験に来てくれた方もいました。
そのときと重なる部分もあったと思いますが、
中学生のときとは違う新しいことも経験してもらえたようで、よかったです。

よく気がつき、チームワークよく仕事をしてくれる3人でした。
将来社会に出ても、今回のように、協力しあってお仕事をしてくれるといいなあと思います。
色々な仕事を手伝ってくれて、とても助かりました。
3日間ありがとうございました。

これからも気軽に、博物館に遊びに来てくださいね。
いつでもお待ちしています。

(学芸員 袴田舞)






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